武器

この前、魔女の宅急便が金曜ロードショーでやっていて、大好きな作品だったので見たのだが、無駄に号泣した。
Twitterには、「キキの自立早い」やら「ジジ可愛い」と言った感想が並んでいるのに、「泣いた」とか「涙」とかそういった単語は見受けられない。私は慌てて涙をぬぐった。恥ずかしくなったのだ。

歳をとったら涙脆くなる、という話は聞いたことがある。それにしてもまだ自分は歳をとった、と言うには早すぎる年齢だ。それなのに、本当に容易いことで泣いてしまう。涙の大安売り。私の涙はタダ同然だ。

とは言え、「やだこのバッグ可愛い泣く〜」と言ってぽろぽろ涙を零すほどに涙脆いわけじゃない(その前にそんな奴はいない)。大抵私が泣くのは、感動するシーンを目にした時耳にした時だ。BGMがロック系なりポップ系なりの明るいものから、ピアノの音が響くバラード系になったらもう私のスイッチはオンとなる。試しに一緒に映画を観てみるといい。あ、ここ感動シーン来るな、という時に私をチラッとみれば99%は泣いている、もしくは涙を目に浮かべている。
問題はそこじゃない。制作陣がここで視聴者を泣かせようというつもりのなさそうなところで、勝手に一人で泣き始めるのだ。魔女の宅急便は中盤(女の子がニシンのパイいらないと突き返すシーン)で号泣。アナ雪だと冒頭10分(エルサがアナに魔法を当ててしまうシーン)で涙腺という名のダムが決壊して映画どころじゃなかった(ちゃんと最後まで見たけど)。

女の涙は武器だという言葉がある。じゃあ私は武器を大量に携えた最強の戦士ではないのか。前までそう思っていたが、気づいた。違う、これは違うぞ、と。私は最強の戦士などではない。むしろ、丸腰の最弱の貧民なのだ、と。
私は見せびらかしすぎた。私こんなに強い武器持ってんのよ、試しに一撃えーいっ、と通りがかる人すべてに攻撃していたのだ。その数や尋常ではないので、武器の手入れ方法など知らない私は、その刃を鈍らにしてしまい、もはや武器を持っていないに等しくなってしまった。畜生、何が「えーいっ」だ!こんな武器捨ててやる!

無理だった。今までずっと一緒に戦ってきた相棒を捨てるには期間が長すぎた。

そして私は今日も冒頭10分から元気に鈍らで素振りを始めるのだった。

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「武器」への3件のフィードバック

  1. 軽妙な語り口で良いエッセイである。感情の挟む余地のない事実から、リズム良く、筆者自身の問題に引きつける構成は上手である。だが、「エッセイは己の恥をさらしてなんぼだ」と言われるように、個のプライベートな内容を公開するということをしなければ、頭打ちになってしまうだろう。もしくは、他者が経験していないであろう、個人の特別な体験を描くということもある。内容面での吟味を進めていけば、より良くなっていくであろう。
    ただ、一つ腑に落ちないのが、筆者の涙の扱いである。私には、武器としての涙と文中で筆者が流している涙はまるで別物のように思えるのだ。筆者はよで一般的に涙と称される液体を流しているに過ぎないのではないか。涙の種類の問題は興味深いトピックではないだろうか。

  2. 上でも書かれていますが、筆者が魔女の宅急便やアナ雪で泣いているのは武器の行使ですか?ちょっと違いますよね。題名も「武器」ですし、涙は武器だ路線でいくなら、もっと男の前で策士的に泣いた経験とか教えてください。
    可愛らしい文体でテンポよく読めましたが、すごい、「ふーん。で?」という感じでした。そこがエッセイの難しいところなんでしょうね。特に筆者特有の面白さも感じられないし、かといって「あるある!超わかる!」ともなりませんでした。
    すぐ泣く人って、すぐ泣く自分が好きだったりしますよね。「感受性豊かな私」みたいな。そこに自分でちょっとした優越を持っちゃってる人。筆者にもそれを感じました。たぶん、そういう被害者意識が自分の中で一種のオナニーになるみたいな感覚、みんなが持ってると思うんですけど、そういう気持ち悪いドロドロさを伝えるための文章ってわけでもないので、ただ、「ああ〜〜この感じ、私にもあるわ…。」となるのではなく、ただ「何か言ってる。ふーん。」で終わってしまう文章になったのだと思います。

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