ポピュラー音楽:現シーン:ヴェイパーウェーブ、電子音楽とおたく/春課題2/ジャムで窒息

こんばんは。今回は「チルウェーブ」よりももっとオタク――否、「ヲタク」表記のほうが親しみやすいでしょうか――気質で、鼻につくバブル感がこもった、「ヴェイパーウェーブ」というジャンルを御紹介します。

このジャンルを表すキーワードといえば、「ビデオ」「ディスコ」「インターネット(とくに初期ネット)」「シンセ」「スーパーマーケット」「ローファイ」「任天堂」「アニメ」…こういったものが挙げられるでしょう。詳しいことはさて置き、代表的な作品を2つ聴いてみましょう。

ださくて雑なジャケットですね(注:これがヴェイパーウェーブ的なかっこよさとなります)。私たちがちょうど生まれた頃の、テレビCMが連想されそうな曲調とでも言えるでしょうか。まさにそうした時代、80~90年代のテレビCMからサンプリングされている場合があります。(「サンプリング」の意味はググってください)

こちらは思いっきり、竹内まりや「夢の続き」の曲調をアレンジして、アニメ『うる星やつら』の一部シーンを抜粋しただけのPVです。実はこういった曲は「ヴァイパーウェーブ」の派生ジャンル「フューチャーファンク」として語られることが多いのですが、ここでは全体的に捉えた紹介ということで載せました。

(ちなみに一週間前、渋谷のテクニークというレコード屋さんでTANUKIのアルバムが売っていました。御興味ある方は是非。)

こういった「ヴェイパーウェーブ」の曲は極最近になって表舞台に出るようになりましたが、依然としてネットレーベルの無料配布だったり、カセットテープのみでのリリースだったりという形態で発表されることが多く、インディーズの域を超えていないように思えます。もともと勝手に古いレコードやアニメのビデオから音や映像を拝借する手法で作られやすいジャンルなので、ある程度アンダーグラウンドのままであったほうが(権利上の問題やオタク/ギークらしい雰囲気づくりのために)良いことも確かなのですが。なお、多くの楽曲がローファイ(音質が低い)であるのも、故意に古いビデオテープから音をサンプリングしていることに由来しています。

80年代の人々には「ナウ」ないしSFチックであったシンセ、ディスコ音楽、ファミコンといったものは、現代人の視点で見れば古臭くて粗く、むしろ圧倒的な懐かしさを感じる対象となってしまいました。そうしたモノたちを現代的に再解釈・再構成して面白おかしむのが、この「ヴェイパーウェーブ」なるジャンルです。80年代のテレビドラマのBGMを改造し、ヘンテコなエコーをかけてみたり、ボーカルのピッチを変えて可愛らしい声にしたり、ヒップホップ的なビートを付け加えて元曲の毛並みを変えてみたり… そうした試みは、前回お話した「チルウェーブ」同様現代的であると同時に、実にインターネット的であると言えるでしょう。ハイパーリンクで様々な(乱雑とした)情報へ辿りつく楽しさを教えてくれた、初期ウェブへの思い。簡素な画像やCGしか作れず、チープに表現されたアニメやファミコンの世界観にのめりこんでいた時代への懐古。まだ続いていた物質的豊かさへの憧れと、それを駆り立てたシティポップやディスコ音楽の残骸。そうした「今ふり返れば」を集約させたジャンルとして考えられます。

 

さて、このような「ヴェイパーウェーブ」ですが、こうしたジャンルの発達にはやはり電子音楽とおたくとの切っても切れない関係が垣間見えます。どのような関係性があるのでしょうか。単純にサブカルチャーにはおたく要素が付き物、と言うこともできますが、もう少しつっこむと、一つには”デジタル音響機器”の魅力がはたらいているように思えます。

KraftwerkやSquarepusher、Plastikmanといったテクノの重鎮を見れば分かるように、もともと電子音楽の愛好家にはコンピュータおたく(ギーク)が多いものです。それというのも、シンセサイザーやスピーカー、エレキギター等が物理工学界の産物であるという側面が大きいのでしょう。後にはコンピューター上での音楽制作が始まるため、情報工学にも絡んできます。音響技師、PAが機器を弄っているうちに新たな音楽スタイルを生み出したという場合もあります(私が好きな「ダブ」というレゲエの一種もそのようにして誕生しました)。理系にも色々な領域がありますが、デジタル音響機器は(物理/情報)工学の要素が強いため、自然とロボットおたく、コンピューターおたくとの繋がりが生まれます。こうした多分にSF要素を含む(サンダーバードやガンダムに憧れて機械の道へ進む人や、YMOの不思議な音色に感化されてシンセマニアになる人がいるように)環境で、デジタル音響機器は一つの”テクノロジー”としてもてはやされ、改良され、進化してきました。電飾にこだわったDJ機器やレーザービームで演奏するシンセにも、SF趣味が見受けられますね。次第に安価なシンセサイザーやカセットMTRが一般に出回ると、知識のない人でも子供の頃からデジタル音響機器で遊び、楽曲をつくれるようになりました。「工学系だからシンセへ」から「シンセから工学系へ」の逆流も起きたのです。

 

他方で完全な”工学系”でなくとも、ネット上や、秋葉原、日本橋(大阪)といった電気街をコミュニケーションの核とするアニメ・映画・ゲーム系のオタクが上記の道のりを遡って、デジタル音響機器ないし電子音楽界に参入する場合もあるでしょう。そういった面からテクノ音楽には特撮映画の効果音やファミコンのような音源、ホラー映画の台詞等がよく使われます。80年代のMIDI規格開発に続く、90年代以降のDTM(デスクトップミュージック)技術の発達は、一人での音楽制作を容易にした上、コンピューターとおたく文化との結びつきをより深いものにしたのでしょう。実際、この頃にはパラパラや電波系ソングなるものが顔を見せており、電子音楽とおたく文化の関連の例として挙げることができるのではないでしょうか。現在の音楽ゲームやボーカロイド文化はある意味、その延長線上にあります。ついでに「チップチューン」「ネオ渋谷系」とされるYMCKの楽曲を聴いてみましょう。「渋谷系」については置いておいて、「チップチューン」について少し解説しますと、ファミコンやゲームボーイ特有の低bitの音(古いゲーム機には高音質=サイズの大きい音色データを組み込むことができませんでした)、またはそれに似せた音源のみを使用してつくる、マリオペイントのようなピコピコ音の楽曲です。ゲーム系おたくと電子音楽の邂逅の最たるものではないでしょうか。

今回はざっくり、「ヴェイパーウェーブ」というジャンルについて、そしてこのようなジャンルの発達の背景となる、電子音楽とオタクの繋がりについて書いてみました。勿論、御質問や反対意見をお待ちしております。

そういえば、このジャンルのミュージシャン達は迷惑メールかと思うような怪しい日本語タイトルが好きですね。

 

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