裸の王様を時間差で指摘したい/オレの文章/フチ子

「鉄板系の調理は男の仕事」みたいな固定観念がパパにはあって、お好み焼きの日なんかはうろちょろうろちょろする。なんだかプロっぽく無駄に蓋をくるくるさせたり、「まだだめだ、あと20秒…」と焼き加減の厳しい解説を入れたりする。とにかくやたらに対象物をお世話する。こだわり満載で、わたしがちょっとでも崩そうとする(蓋を開けるべきでない時間に開けようとしたり)と、睨んでくる。わたしが小さいときはパパのその睨みがあまりに怖くて、鉄板の料理のときは絶対に触れてはいけない、と幼心に学んだ。そしてちょっとべちゃっとしていたり、ひっくり返すのに失敗してボロッとなっていたり、味が濃かったりしても、美味しい美味しいと言って食べる必要があったし、食欲がなくてもそれなりには食べなくては、と意気込んだ。

しかし、おそらくママはパパよりもお好み焼きをひっくり返すのが上手い。ステーキを焼くのもママの方が上手い。焼きそばも、焼うどんも、たこ焼きも同様だ。パパが出張のとき、粉物は簡単にできるからと2人でお好み焼きを作るが、いつも絶妙な焼き加減だし、綺麗にひっくり返しているし、味付けも失敗しない。普段から料理する人ならではの安定感があって、パパとは比べ物にならない。ママにとっては簡単お手軽レシピであり、手抜き料理なのだ。

3人で鉄板を囲み、パパが得意そうに失敗していると、わたしはどうしても言いたくなって、うずうずしてくる。「そんなに触らなくてもほっとけば美味しく焼きあがるんだから」「そんなにお好み焼を睨むなら、ママに頼んじゃおうよ」「分厚すぎ、上手くひっくり返せないでしょう、それじゃ2回分しか作れないよ、あ、ほら割れちゃったじゃん」言いたいことはたくさんある。でも、それはママとパパのために言ってはいけない。言っちゃだめだと言われたわけじゃないけど、多分言ってはいけない。そういうことが年をとるたびに察せるようになった。

もともと、変なこと、相手が触れてほしくない、気づいて欲しくないようなことに気づいてしまう癖がある。自分の中の気づきたくない気持ちに、気付かないほうがよかった気持ちに気づいてしまう癖がある。そしてそれを堪えきれずに口走り、だから男にモテないんだよとか言われたこともある。言いたい欲に負けて言ってしまうこともあるのだけど、もう21歳になるので、大人にならなくてはならない。でも言いたい。なら書いてしまおう。そんな感じで吐き出してしまう破片たちに、少しずつ言葉を飾り、これ見ようがしの女の子らしいひらがなをつけて柔らかくし、言葉の詰まりやためらいを入れたものが、おれの、文章だ。

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