小さな親切、大きなお世話/オレのスタジオ/ヒロ

「何も、本当に何も影も形も残ってないな」
 そこにあるのはただの荒野だった。生き物の気配はなく、水気もない。土はひび割れていて、草木なんてものは形もない。ただ何もない土地が広がっているだけであり、何か他に例えようにも私には不毛の大地としか表現することができなかった。

 ここがかつて木々があって緑にあふれ、穏やかな川が流れていた平和な土地だっただなんて誰にも想像することはできないだろう。今思い返してみればそれは楽園そのものであった。木々は季節によって姿を変え、春は散った花弁が、秋は赤く染まった落ち葉が道に積り、足取りを遮ることもあった。川も魚が棲んではいたが澄み切っていたとはお世辞にもいえない状態であった。それでも色鮮やかに変わる木々を、耳に心地よい水音を立てて穏やかに流れる川を、私は何気ないものだと感じながらも、確かに愛していた。それも失ってから初めて気づいたことではあったが。

 その光景がこのような惨状に変わってしまったのは一つの法律の改定が原因だった。それは本来ならば何でもない変更であり、改定案を挙げた人も些細な変化を生むだけだと考えていたはずだ。ただの善意の結晶だったはずだったのだ。
 間違いはこの法律が改定された後から始まった。改定案を施行した人が善意からより良く上手くできるはずだと本来とは少し変更した内容で行った。それからもその改定案は人々の善意によって歪められていった。それぞれの行いは何の変哲もない小さな善意だった。それらが積み重なっていった結果、私が、私たちが愛していた光景が破壊されるという最悪な結末が訪れたのだ。

誰も悪くなかったとわかってはいた。善意のすれ違いでしかなく、それまでの現状を変えようとそれぞれが考えただけだったのだ。そして口から私が今まで胸の内にあった言葉がこぼれる。
「それでも、それでもあの法律の改定がなかったなら。こんな惨状にはならなかったはずだ……」
それまでの平和で穏やかな光景でも良かったはずだ。無理をして変える必要なんてなかったはずだ。
 かつての穏やかな光景を失ってしまった荒野の前で私は泣き崩れることしかできなかった。

 と、いうわけで私はスタジオの変更に反対です。私は特に現状に不満はありません。今のままでも良いのではないでしょうか。

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