君だよ/嘘/Gioru

「君は君だよ。『君らしく』なんて曖昧なものじゃない。何やったって変わったってカンケーない。君はどうせ君だよ」

―宮園かをり―

 

容姿端麗、性格は明るい。個性的な演奏をするヴァイオリニストで人気もあり、やりたいことをするのに躊躇いがない。そしてカヌレが大好物な女の子。そんな彼女が漫画『四月は君の嘘』のメインヒロインである宮園かをりである。

 

小さい頃のトラウマによってピアノを弾くことができなくなった主人公、有馬公生をその明るさと強引さで無理やり舞台に連れ出し演奏させる。モノトーンの世界にいる彼をカラフルな世界へと連れ出す役目をかをりは担うのだが、そんな彼女も本当は弱虫で寂しがりや。誰かに背中を押してもらいたい一人の女の子として物語では描かれている。

 

彼女が本当の気持ちを押し殺しながら、それでも明るく振る舞い、自分のやりたいことを貫いていったのは、彼女の持つ病気のせいで寿命が短いことを悟ったからである。残り少ない人生において、自分のやりたいことを全部やる。いままで怖くてつけられなかったコンタクトをつけ、譜面の指示に従わないで自分の弾きたいように演奏してあげる。

 

そんな彼女も1つだけ嘘をつく。5歳の時に主人公を知り、その演奏に憧れ、中学で同じ学校になり、やがて恋心が芽生える。でも主人公の側には、主人公ととても仲のいい女の子。割り込む隙を見出せなかった。だから主人公の友達の男の子を好きということにして彼に近づく。これが彼女のついた、たった1つの嘘。

 

この嘘によって主人公が振り回されてしまうのはまた別のお話し。

彼女の嘘が嘘であると主人公に伝わるのは物語のエンディング。彼女がこの世を去った後、残された手紙を主人公が読んだ時である。この時にようやく、彼女のやりたかったことが叶うのである。願いが叶い、願いが届いたのに、その答えを受け取る彼女はどこにもいない。彼女のいない世界で新たな春がやってきて、彼らはまた動き出す。ありがちな世界ではあるが、どこか置き忘れてきてしまったものを見るような感動を味わうことができる物語だと思う。

 

さて、この嘘。これをかをりがついたことで、かをりは生きている間に主人公に思いを告げることができなかった。実はそんなことないのかもしれない。かをりは作中でも何とかして生き抜こうと必死になる描写をこれでもかとしている。病気に打ち勝って、いずれはこの嘘を取り消そうとしたかもしれない。

しかし、結果として自分の思いが届くといいな、そんな願望を残してこの世を去ることになってしまった。

 

では、嘘をつかなかった方がよかったのか。これはノーと言えるだろう。ここで嘘をつかなければ彼女は主人公に近づくための第一歩を踏み出せなかった。少なくとも彼女にとってはこの嘘はつかなければいけないものであった。

 

冒頭のセリフは、主人公がトラウマに悩んでいるときにかをりが主人公に対してはなった言葉である。いかに主人公に対して、かをりがどんな感情を向けているか、前を向いてほしいのかよくわかるセリフである。

 

セリフ自体はかをり本人にも当てはまると考える。

死の宣告をされて、ならば悔いの残らない生活を送ることを決める。でも、そんなときでも躊躇いや葛藤があって、それでも前に進みたいから『嘘をつく』という選択を取る。

言い訳かもしれない。でも私は私。

 

何だか非常に眩しいものを見たような気がした。


TVアニメ「四月は君の嘘」オフィシャルサイト

URL:http://www.kimiuso.jp/

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「君だよ/嘘/Gioru」への5件のフィードバック

  1. 四月は君の嘘、読んだことがあったので要約部分はほぼとばして読み進めました。読む相手、対象を絞るというのはグループ発表ですから難しいとは思います。けれど、どんな人でも読めるようにという配慮のせいでぱっとしません。もし顔を合わせていてこの話をされたらこの後の展開を楽しみに会話をしたでしょう。物足りないのです。導入部分だけ渡された気分。

  2. 導入から、ストーリーの解説に至り、とても筋道が立っていて、丁寧に書かれているなあと思いました。作品の考察もわかりやすく、どういうストーリーなのかよく入ってきたので、構成や文の作り方などうまいと思います。

    ですが、今回の話題では仕方ないのかもしれませんが、ストーリーに関心を持ってもらいたい話に、かなり核心に踏み入ったところの話があったので、最後に公式サイトへのリンクを貼ったりするのなら、核心は曖昧にしたほうがよかったかな、と。そうすると今回の話題との辻褄が合わなくなるかもしれませんが。

  3. 要約が少しぼんやりしている気がしますが、物語を見たことがないのでなんとも言えないですね。親しみやすく
    くだけた文章としてはとても読みやすかったです。もう少し心理描写があってもいいかもしれません。

    ただ、嘘をテーマにした時に、嘘にまつわる作品を持ってくる、という発想が私にはなかったのでいいと思いましたが。

  4. 以前から気になっていたタイトルなので、興味深く読みました。比較的短い文字数で物語の内容とテーマ「嘘」についてまとめられていて、純粋にうまく、羨ましく思います。
    ネタバレ的な「まさかの」の面白さよりも、物語の悲劇性を考えさせるものに読めてしまい、多少の置いてけぼり感がありました。冒頭の引用との繋がりが個人的には薄いように思えてしまったので、補足があるとよいと思います。

  5. 物語の説明や、それに対する考察は上手でした。ただ、冒頭のセリフを引用した意義がよくわからなかったです。

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