歪な残響/嘘/ノルニル

雨に洗われた葉っぱのにおいが好きだ。水滴に彩られてきらきら光るつつじの、その根元の蜜が恋しくて花壇を枯らした、そんなわたしたちだけの秘密。整った花にほんの少しだけ残された、どこか物足りない甘さがわたしを惹きつけて狂わせた。

鏡に映ったその姿に、日々積み重ねた嘘が幾重にも降り積もる。うわべを取り繕って、外見だけを着飾りながらただじっと、ひとり息を殺してあなたを待っていた。

 

夢の庭であなたとふたり、寄り添えればそれでよかった。焦点の合わない瞳は虚ろで、それでも美しかった。そこには引力に取り込まれ押し込められるような快楽があった。
ぎこちないやり取りとちぐはぐなステップを交わし、気づいたときには、いつの間にか大きく歩調がずれていた。追いかけようと伸ばした指はその背中を掠めて、そっと息絶える。
あなたが走るのなら、誰よりも必死で追いかけるし追いつく。だけど、ひとりで走りたくないんだ。そんなの誤魔化しでしかないと、わかっていた。

塗り固めてつくりあげたわたしはとても頼りなくて、なのに生きるよすがとするには少し余る。澱んだ頭の内側から剥がれ落ちたなにかが、だんだんと形をなしていく。

 

青い海に救いを求めて、縁から覗き込んだ。けれど、映るべきあなたの、わたしの姿は波にかき消されて、白い泡に溶ける。もうそこにわたしなんて、いなかった。
今までありがとう。ずっとこうしていたかったけど、もう届かない。あなたが住まう海の底、そこではどんな景色が見えるかな。風に乗って消える言葉がくちびるに形を残す。
渦巻く水音はそこらじゅうの壁に反響して、どこか満場の拍手にも似ている。わたしはもうじゅうぶん頑張ったから、あとは任せるよ。これからわたし、をよろしくね。止むことのない喝采の中、わたしは舞台を降りていく。

1 vote, average: 5.00 out of 51 vote, average: 5.00 out of 51 vote, average: 5.00 out of 51 vote, average: 5.00 out of 51 vote, average: 5.00 out of 5 (1 投票, 平均点: 5.00,  総合点:5  |  
投票する為にはユーザ登録する必要があります。
Loading...

「歪な残響/嘘/ノルニル」への3件のフィードバック

  1. なんだか雰囲気のいい、一文一文写真集のキャプションに使いたいような、色が見える文章だった。しかし、何が嘘で、文脈がよくわからなかったので、長ければ長いほどめんどくさくなってしまう文章のように思う。今回はそこまで長さはなかったのでかろうじて最後まで普通に読めたけど、最初の方だけ読めればいいかなあといったものだったと思う。
    女性らしい、コテコテすぎて逆に女性っぽくないかもしれないけれど、最後まで同じトーンで書かれていてよかった。

  2. 水音が拍手に聞こえるという表現はとても上手いと思いました。文章全体も綺麗で読みやすいのですが、全体的に嘘の印象が薄いことと、半端に詩的な感じが気になります。詩によせるなら、もう少し具体的描写を減らして想像の余地を残しても良いのではないでしょうか。あるいはもう少し情景描写をいれて物語性を出しても良いのかな、と思います。

  3. 歌詞のような文章だった。しかも詩を読むだけでメロディーが脳内に響き渡るようなものだった。しかし歌詞と同じようなちょっとした意味不明、前後文の関連性が見出せないモヤモヤした感じも残った。気になった文中「あなた」という人物、最後までどんなものなのかはよくわからないまま終わり、それも読者との同一化は絶対ありえない存在だったので、「あなた」と関係の深い「わたし」の感情も掴めにくくなった。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。