騙されてるのは誰なのか/嘘/ヒロ

 ウソ発見器ならぬウソ阻止機が発明されたのは一年前のことだ。
 これはその名の通り嘘を吐けなくさせる機械のことだ。詳しい仕組みは学のない俺にはわからなかったが、脳やら血圧やらから嘘を吐こうとしていることを感じとり、それを暗示なんかで言えなくさせてしまうらしい。
ああ、説明が雑なのは勘弁してくれ。俺にはこれが精いっぱいだったんだ。まあ大事なのはそれが本当に開発されたっていう事実だ。

こいつのおかげで裁判や取り調べなんかは格段に精度が上がった。なにせ嘘自体がつけないんだからな。
まあそいつが自分で嘘を本当だと信じ込んでることもあるからそれが全てってわけじゃない。それでも証言が昔よりも重視されるようになったのは事実だ。
それと同じぐらい黙秘権も重視されるようになったけどな。

この素晴らしい機械のおかげでこの社会の中で人間不信や引きこもりは一層加速した。そりゃそうだ、お世辞や慰めなんかのお優しい嘘ってのまで吐けなくなったんだからな。
今じゃ世の中の人間は二つに分けられるようになった。嘘も本当のことも言わないように黙り込んでるやつか、嘘じゃないが本当のことでもない薄っぺらい言葉をひたすらに並べ立てるやつだ。
しかもウソ阻止機を身に着けていないやつは嘘つき扱いで何も信じてもらえない。

そしてこんな世の中で得をするのは今まで嘘なんて吐いたこともないような根っからのバカ正直なやつか俺みたいな嘘を吐かないで人を騙すことができるような詐欺師だけだ。
本物の詐欺師は嘘を吐かずに真実を操って人を騙す。ウソ阻止機のおかげで絶対に嘘は吐かれないと思い込んでる人たちは面白いように騙される。今日も世間知らずなばあさんを騙して八〇〇万ほどせしめてやったところだ。
本当に賢い人間ってのはウソ阻止機に使われることなく、活用しきってやる人間のことを言うのさ。

だけど悪党にも守りたいものがある。まあ恥ずかしいんだが親ってやつだ。親に胸を張れるわけじゃないが見捨てることもできねえ。……また送金しねえとな。
だけど一つ気になるのが最近送金先を変えてほしいって連絡がきたことだ。まあ俺の親は詐欺師な俺を産んだとは思えねえくらいの正直者だからな。俺の送金にも親切な誰かが送ってくれてるんだろうなんておめでたいことを考えてるに違いない。
また自分が騙されてるなんて思いもしない馬鹿なやつから金をふんだくらねえとな。

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「騙されてるのは誰なのか/嘘/ヒロ」への4件のフィードバック

  1. 最初は本当にそのようなものが発明されたのかと驚いたがまんまと騙されてしまった。本当にこのような世界になってしまったとしたら逆に今以上に人間関係に支障をきたしやすくなるような社会になるんだろうなと考えさせられるものがあり、面白かった。しかし、オチがありきたりで少し捻りがあった方が更に良かったとも思う。

  2. アイデアとしてはとても面白い発想だと思いました。真実を使って騙すという手口が実際どんなものだろうと想像力が膨らみました。(ここはあえて詳しく言及してなかったのも良かったと思います。)
    小説はオチを読者は期待するので、もっと分かりやすく大胆になっても良かったと思います。

  3. 良い意味でも悪い意味でもショートショートっぽさを感じさせられた。発想が素晴らしくきちんと構成されている小説だと思うが、オチが語り口からみえみえだったのが惜しい。

  4. 詐欺師ポンコツかよ! 文字数制限をうまく利用した、完成度の高いSSだと感じた。なのでひたすらあらを探すコメントになるのだが、ウソ阻止機ってちょっと言いにくいし、もっとかっこいい感じの名前があるとよかったのではないか。
    あとは、説明だけされている部分も追及したら面白そうだ。真実を操り人をだます詐欺師の頭脳戦も見て見たい。

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