出来るのだとそっと私たちに嘘をつく。/嘘/どみの

永久機関という言葉をご存じだろうか。エネルギーを作るためには何かしらのエネルギーを供給しなければいけない。自動車の動力エネルギーには、ガソリンを燃やす火力エネルギー、蛍光灯の光エネルギーには、電力というエネルギー、電力というのも火力や、風力、地熱、太陽光のエネルギーが必要である。しかし、永久機関(正確には第1種永久機関)というのは一度動かしたら、仕事をし続ける装置のことを言う。つまりエネルギーの供給を必要としないのだ。そのようなものが出来れば、世界のエネルギー問題は一気に解決しそうである。人類は古くからこのような夢の装置の開発に取り組んできた。

しかし、今日私たちは実在する永久機関を知らない。多くの科学者たちが設計図を書いたのにもかかわらず、成功した試しがない。その設計図たちは、至極論理的で私たちに期待を与える。一方で、エッシャーのだまし絵『滝』のように巧妙に矛盾を孕んでいるのだ。

“無限”“永久”“永遠”私たちは、これらのことばに憧れそして夢を見てきた。無限を実現する。それはシンプルにして難解な問題である。不死といった伝承として、数学的な理論として、私たちの身近にある無限は、”∞”といった記号や時には濃度といったもので表現されてきたが、無限の存在を証明することは、どのジャンルでもかなえられないのが事実である。そもそも私たちが住んでいるこの宇宙が、有限であるから。しかし、この世界が無限でないと証明できるものもない。だから私たちは、夢を見続けるのだ。証明が出来るかもしれないと私たちは私たちに嘘をついて生きている。嘘じゃないかもしれない。でもそれは蜃気楼のように淡く幻のような存在である。

 

ところで、永久機関の発明の後日談はこのようになっている。失敗という経験の積み重ねの結果、エネルギーの総量は一定に保たれるというエネルギー保存の法則(熱力学第1法則)が得られたのだ。これは高校物理で必ず学ぶ物理でも基本的な法則の一つだ。

無限の存在、タイムマシン、宇宙旅行、地中探検など、嘘みたいな存在の探求は決して悪いものではない。実現するにしろ、しないにしろそれらは何かしらの影響を私たちに与えてくれる。科学的な産物だけではなく、文学が、芸術が発展していった背景にはどこかで不可能を可能にしたいという想像力の存在がある。

この世で嘘と、幻と言われているものが実は存在する。そんな夢を一度は見たことないだろうか。未来の世界で発明される永久機関に「うそ!」とそんなふうに驚いてみたいものである。

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「出来るのだとそっと私たちに嘘をつく。/嘘/どみの」への5件のフィードバック

  1. 永久機関というテーマ性が強すぎて、嘘は取ってつけたような感じ。もう少し、嘘について書かれたことが個人的には読みたかった。しかし、これはこれで哲学っぽい文章で面白いと思った。

  2. 「嘘」というと人が人を言葉で騙すようなイメージがあり、私自身そのことを念頭に文章を書いた(というよりその発想しかなかった)。子の文章での「嘘」は「信じられない」みたいな意味で使われていて着想が面白いと思った。

  3. 未だ実現していないことは虚構であり、それもまた一つの嘘である。少しひねって永久機関を突きつめてあり、面白く感じた。
    しかし、日常的に使われる嘘に関しての見解も欲しかったと思う。

  4. 永久機関。素敵な言葉だ。SFっぽくていい。
    トピックのインパクトに惹かれたのもあるが、著者の文章力も高い。ありえないと言われているものが、でもありえるかもしれないと思い続けている人がいるから、芸術や化学やそのほかいろいろなものが生まれた理由であるという、そこまでの誘導がよかった。
    なので、あと一歩とも思ってしまう。いや、具体的なことは何も思いつかないのだが。例えば、永久機関を題材にした物語をつくれば、難解な文章を読むのが苦手と言う人の心も掴める可能性がある。もしくは、批評の材料として永久機関という概念を他のもの、予想もつかないものに当てはめてみるとか。あとは、なんというか、作者の永久機関萌え! みたいなものがあらわれていたら、一気に永久機関への好感度が上がる気がする。永久機関のここがいいぜ!! という情熱があるともっと文章を読んでいて幸せになれそう。

  5. 永久機関が、どうしたら今回のテーマに結びつくのかワクワクしながら読みました。
    大概の人は、私を含め嘘を人を欺くものとして捉えて書いていましたが、どみのさんは驚嘆の、現実を疑う意味としての「うそ!?」に結びつけたわけですね。
    なるほどなぁとは思いましたが、永久機関の話題に触れすぎな気がします。知識の羅列というか……全く知らない事柄についてなので楽しく読みましたが、ウィキペディアやまとめサイトを読んでいる感覚でした。

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