隣にいるだけ/どうなの?/ネズミ

 

「え、あ、なに?彼氏いるの?」

 

好きになった子には彼氏がいた。以前から彼女の言葉の節々には彼氏の存在を匂わせるものがあった。ある程度の覚悟はしていたつもりだが、動かしようのない事実として突きつけられるとかなりこたえる。急に体が重くなり、お腹が痛くなってきた。

 

僕の中には人の好きになり方が2パターンある。一つはその人と過ごしているうちに気づいたら恋に落ちているというパターン。もう一つは、初めにこの人を好きになろうと決めてから自分に暗示をかけるというパターン。イメージとしては能動的に自分を恋に落とすといった感じだ。今回は前者であり、このパターンを経験するのは大学に入ってからは初めてだった。

恋を病に例えるのだとしたら、「気づいたら好きになっていたパターン」の方が症状としては圧倒的に重い。四六時中その人のことを考えるようになり、この人のことを好きになる前は何を考えて生活していたんだろうと思うほど、とにかく頭から離れない。まさにその人を中心に僕の生活が成り立っているという状態だ。

 

それだけ好きであった人から彼氏がいると告げられた僕のダメージを察していただけるだろうか。それからも会話は続いたが、正直何一つ覚えていない。目に見えるように口数が少なくなる。僕の頭の中はもう別のことでいっぱいいっぱいだった。ずっと続くと思っていたこの気持ちに、急に終止符が打たれた。好きじゃなくなったのではない。好きでいてはいけなくなったのだ。

この人を好きでい続けても損をするのは自分自身。だったら、早めに忘れてしまった方がいいのか。もう何が正解なのかがわからない。モヤモヤとした嫌な感情が胸の奥底から、はい上がってくる感覚が確かにあった。そんな思いがピークに達したとき、思わず好きだということを伝えてしまった。

思いが溢れるというのはこういうことなのかと後々思った。告白したところで彼氏から彼女を奪えるわけでもないこの状況で好きと伝えることのメリットはほとんどない。どこにもやりようのない思いは少しだけ浄化されたような気もしたが、それはあくまでその瞬間だけであり、家に帰って一人になると再びモヤモヤは湧き上がってきた。また言わなければこれまで通りであった彼女との関係にもヒビが生じた。それでも僕は言わずにはいれなかった。

 

あの時僕は何がしたかったのだろう。

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「隣にいるだけ/どうなの?/ネズミ」への2件のフィードバック

  1. 傷の舐め合いをしたいと思った。

    思いが溢れる、という響きは綺麗なのに、心の中はぐちゃぐちゃと汚くて、ドロドロしててみたいな感じが出ていて良い。男の人の文章がこうだと少し希望が持てる。こんなに考えてくれる男の人がいいなと単純に思う。

  2. 男性の恋愛観にしては大分優しく、それこそまどろみの様な文章だなという印象を受けた。今までもネズミさんの作品は何度も読んできたが、一番感情を見せられたなという感じがする。文体の話をするとするならば、エッセイでも小説でもなく、きっとこれは独白という形式になるのだろうけれども、個人的にはこの独白を活かしてエッセイ的考察、あるいは小説的物語などに派生していくとさらにおもしろいものになるのではないかなと思う。もちろん独白も良いと思うが、形は他にもあるのではないかと思うので、積極的に他の形の文章にも挑んで欲しくある。

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