家と大学の/距離/やきさば

わたしの家と大学間には絶妙な距離がある。
だいたい歩いて15分ほどの距離なのだが、完全住宅街なので夜は真っ暗だし、人通りも少ない。

その距離はときに長いし、ときに短い。

家と大学間の距離が長いとき。
2限に行くのに10時20分に家を出たとき。
夜1人で帰っていると、昨日見た映画の怖かったシーンを思い出したとき。
バイトで疲れているとき。
スーパーで買った荷物が重いとき。

家と大学間の距離が短いとき。
何か考え事をしながら帰っているとき。
好きな人と電話しながら帰っているとき。
好きな曲を口ずさみながら帰っているとき。
楽しかったことを思い出しながら帰っているとき。

この距離は何か考え事をするのにちょうどいい。
あのときわたしが発した言葉は誰かを傷つけてしまったんじゃないか。
あのときわたしが考えたことは間違っていたんじゃないか。
あのときわたしが示した態度は失礼だったんじゃないか。
あのときわたしが……

わたしはすぐに甘えてしまうから。周りの人が優しいとわかるとすぐに甘えてしまうから。
いつか間違えてしまいそうで怖い。
わたしのあの言葉は失礼じゃなかったかな?軽率じゃなかったかな?怖くなかったかな?
わたしの純度100%の言葉はきっと相手に届くときには40%くらい濁ってる。
わたしの言いたいこと全部が、わたしの気持ち全部が言葉一つで伝わればいいのに。

相手と距離を埋めていくのは難しくて。
言葉一つじゃ足りなくて。
あのときどうすればよかったんだろうと真っ暗な住宅街にのまれながらゆらゆら考える。

わたしの純度100%を受け取ってほしいけど、全て知られるのは怖くて。
ああ、だからわたしは人との距離が埋められない。

こうして大学から家に帰るときみたいに少しずつ、目に見えて埋められればいいのに。
右足を出して、その次は左足を出す。そうして少しずつ埋められればいいのに。

きっと明日も作り笑いをしてしまう。
きっと明日も無理に取り繕ってしまう。

きっと明日も純度100%のわたしはいない。

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