熱いぬるま湯 /距離/YDK

 

同性同士の距離感が異性のそれと同じくらい難しいと思う。特に女の場合。

毎日の挨拶のように、当たり前に紡がれる好きという言葉に、何度心が揺れたんだろう。何度燃えた心に無理やり水をかけただろう。
毎日食べるご飯のように、当たり前に求められるハグに、何度心までぎゅーってなったんだろう。期待しちゃダメだって言い聞かせるのにも疲れたな。

私、おかしいのかな。

「あやかー、帰ろうよー」
「あっ!うん。もう日直の仕事終わったんだね〜。いこいこ!」

ぼんやりと考えていて時計を見ていなかった。香澄に変な風に思われていないだろうか。……むしろ変な風に思われた方がいいのかな……。なんて。

「今日帰りどこ行く?」

私の不純な想いは、横から絡められた腕に持って行かれた。最初の頃はいちいち心臓が警鐘を鳴らし続けていたのに、いまではそんなことを悟られないように、さらっと流せるようになってしまっていた。それが良いのか悪いのかは、わからないけど。分からないまま、ここまで来てしまった。

「うちくる?」

今日の私は、少し変だ。こんなことをしても、もっと苦しくなるだけなのに。彼女が返す返事だって、とっくに分かってるはずなのに。そのくらいにはもう距離は近い。

「いく!いいの!?」

純粋で汚れのない目が苦しい。この娘の全てをめちゃくちゃにしてやりたくてたまらないのに、同性にしか向けられないであろうその柔らかな目が、私を衝動に駆り立ててながら、宥めてくる。下心で誘ってるだけの私を全否定してほしいのに、否定されるのが何よりも怖い。いつか隠しきれなくなった下心が、行動になって彼女を傷つけやしないだろうか。
男だったら、堂々と彼女を好きになって、告白して、手をつないで、セックスして。でも、女だからこそいまのこの距離感があるのは事実で。どうして女に生まれたのだろうと幾度と思ったけど、後悔したことは一度もなかった。心の距離が誰よりも近いという自信を持てるのは、同性であるがゆえだろう。

 

家までの道のりで、私は彼女に、襲っちゃおうかなぁとか、そろそろちゅーでもするかとか、本気の冗談をぱらぱらと撒いた。

 

本当の気持ちを、覆い隠すように。

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「熱いぬるま湯 /距離/YDK」への1件のフィードバック

  1. 直接的な表現が連なり、脳汁ダダ漏れといった感想です。私はここまで率直に書けないので、ぜひとも心情描写の参考にしたいところです。
    最後の一文での改行が目につき、惜しいと感じてしまいました。おそらく、そこで緩急を作って結果的に浮かせてしまうより、勢いに乗せて押し流してしまった方が全体のバランスが取れるのではないかと思います。

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