想起/たなべゆうき/オレオ

時計を見ると無駄に大きく飾られたそれは午前1:00を指していた。
予備校をサボり、近場にあるゲーセンで時間を潰していたらいつの間にかこんな時間になっていたらしい。

周りを見てみると、年季が入ったクソジジイとオタクっぽいやつらがチラホラ。ここにいるやつらは何が楽しくて生きているんだろうか。こんな夜中にゲーセンに来ることでしか悦を得られないなんて何て寂しいやつらなんだ。

夢で溢れた小学生の頃のこいつらが今のこいつらを見たらどう思うだろうか。そんな事を考えていると、それはそのままブーメランの如く自分に返って来ることに気づく。

「だりぃ」

足が速くてクラスの人気物だった小学生の頃の自分は夢に満ち溢れていた気がする。夢は確か陸上選手になってオリンピックで金メダルを獲ること。今思い返してみれば凄く安易な考えだけど、小学生なんてそんなもんか。

バスはもう通っていないので、仕方なく歩いて帰る。

クラスのやつらは今どうしているだろうか。ふと、そんなことを考えて色んなやつらとの記憶を遡る。すると、なぜだか一人の人物が脳裏に浮かんだ。

そいつはいつもビクビクしていて、クラスの皆から時々からかわれていた。名前は『田辺』。確か皆そいつのことを名前のわりに臆病だからという理由で『オク』って呼んでいた。だけど下の名前が出てこない。

名前のわりにってどういうことだ。臆病だからオクっていうのもいかにも小学生が思いつきそうなアダ名だ。正直そいつの名前なんてどうでもよかったのだが、ここまで来ると思い出さずにはいられない。

もやもやを取り払うために必死に記憶を探るが『オク』という呼び名しか思い出せない。

そんなこと考えながら帰路を歩いていると、路地裏で中年のおっさんがDQNに絡まれているところに遭遇する。矛先が自分に向けられるのが怖かったのでそそくさとその場を離れた。

すぐに思考は田辺の名前からDQNと戦っておっさんを助け出す妄想へと変わる。妄想の中では華麗にDQNの拳を躱し、1発ノックアウトをかましてやる自分の姿。もちろんそんな勇気は無く、不運なおっさんに同情するのが精一杯だった。もし俺にそんな勇気があれば――

なんだろう、今何か思い出せそうな気がした。

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「想起/たなべゆうき/オレオ」への1件のフィードバック

  1. その臆病な田辺くんに勇気と同じ音である悠希という名前は不似合いであるとか、あるいはそんな臆病な田辺くんにあったなけなしの勇気の話であるとか、もっと掘り下げてあったらなと感じました。それが今ぱっとしない語り手と絡んできてもよかったかもしれません。

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