たなべ君とゆうきちゃん/田辺悠希/なご

田辺悠希はバイセクシャルにあこがれていた。

それは中学生の頃で、要因としてはケーブルテレビで見た音楽チャンネルのとある海外番組の影響だった。

企画内容はとあるバイセクシャルの女性タレントが男女問わずに恋人を探すというものだ。男女20人が豪邸に集められ、どんどんと脱落していき、最後の1人を目指す。恋人になりたい人たち同士やその女性タレントとのトラブルがとっても面白く、意外と人気でシリーズもいくつか出ているそうだ。

これを夢中になって見ていた彼はバイセクシャルというものかっこいいと思い、バイを名乗るようになった。一種の中二病のようなものだったのだろうと今では思う。

彼の身体自体は男なのだが、この中性的な名前から自分を「たなべ君」という男の部分と「ゆうきちゃん」という女の部分の2つのパートに分けることにした。これも中二特有の設定好きから来るものだろう。

普段、学校にいるときや、家で家族と過ごすときは「たなべ君」が大部分を占めている。彼は家族にはバイは隠していた。厳格な父にそんなことを言ったら間違いなく半殺しにあうと思ったからだ。仲良い友達には「俺ってバイなんだよねー」なんて軽く言っていたような気がする。きっと友人たちは本気にはしていなかったし、彼自身も本気ではなかったのかもしれない。

「ゆうきちゃん」が現れるのは彼が、いや、彼女が一人で過ごしているときだ、彼女はネットの世界で女の子になりきっていた。女子のふりをしてブログを書いたり、チャットをしてみたりといわゆるネカマ行為に耽っていたのだ。

そんな彼に変化が現れた。クラスメイトの男子に恋をしたのだ。今思えば、恋をしたと思い込んでいたというべきなのだろう。彼自身もこれは驚きである。バイに憧れ、バイのふりをし、自らを2つの人格に分けるなんていうことをしてある意味遊んでいた彼は、「ゆうきちゃん」ではなく「たなべ君」の状態で男に恋をしたのだ。バイにもいろいろあると思うが、当時の彼はトランスジェンダーとバイセクシャルをごっちゃに考えていたのかもしれない。

彼は悩んだ。今までバイを名乗っていたはいいものの本当にバイになって良いのだろうか?バイというより実は女性は恋愛対象にならず、ゲイなんではないだろうか?

この恋がどう決着したかは知らないし、高校生になる頃には彼はバイを名乗らなくなっていた。いわゆるノーマルに戻った(なった)んだろう。彼にとって中学生のこの時期は黒歴史として封印されている。私がこのことを突っ込むと決まって「あのときはとんがってたからなぁ」とバツの悪そうな顔になる。

たなべゆうきはバイセクシャルになり損ねた。

 

 

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この文章は実在の人物とは関係ありませんが、田辺悠希さんのおかげで私は少しスッキリしました。

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「たなべ君とゆうきちゃん/田辺悠希/なご」への2件のフィードバック

  1. 実話かな?私も中学生のとき、「設定」とかではまったくもってないのだけど、普通に恋心を抱く男の子がいたが、女の先輩に対する憧れみたいなものも、今考えると恋心とどう違うんだというくらい激しいものだった感じがして、ちょうどそういう時期だったのかなということで片付けてしまっている。対象が男か女かという違いだけで、たぶんたまたま好きな人が男だったとき、これは恋だと判断していた。でも、ときに同性に対する気持ちの方が複雑で大きいものになり得るから、よく分からない。

  2. 私のリア友に本当にこんな子がいてすごい既視感
    中二病こじらせて男女の二重人格設定からのトランスジェンダーってよくあるんですかね

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