クラスメイト/たなべゆうき/なべしま

田辺悠希

どう見ても腐っているのだ。
いや、腐っているというのは語弊かもしれない。どちらかというと、朽ちているに近いだろうか。体に皮膚はほとんど残ってないし、そのかわり剥き出しの真皮は苔に覆われている。頭が妙な色をしているのは黴だろうか。
しかしクラスメイトであるし、かといって特別に扱うのもそれは田辺の人格にも関わる。田辺はいい奴なのだ。特に悪いところがないという点で。
皆の気持ちは同じなのだろう。皿の上の最後のポテチは誰も手に取らないし、網の上の肉は限界まで日にさらされ続ける。……ちょっと違う気もする。ただそういう、なんとはなしに強調してしまった空気というのはあるものだ。そんなわけで、田辺悠希は何となく、うちのクラスにいる。

変化があったのは運動会の時だ。
修学旅行同様、わけもわからず興奮を覚えるイベント。たまたま教室に水筒を忘れ、一人急いで戻った。どういうわけかクラスには田辺がいた。今から思えば、植物たちによる腐食を防ぐためだったのかもしれない。ともかく田辺は一人で自分の席についていた。
「田辺!クラス順位見たか?優勝できるかもよ、この後も頑張ろう!」
それでポンと肩を叩いた。
田辺の腕が落ちた。燻製のようだった。ちょっといい匂いもした。
たが腕は腕である。
「た、田辺、死んじゃうのか?」
「お前は本当の死を知らない」
田辺は冷静に腕を拾い、ゴリゴリと肩に腕を捩じ込んだ。
「お前の腕、ジョイント式だったんだな」
「確かに僕の腕は立派だが、君のも悪くないぞ」
そういう意味ではない。思ったことがそのまま口に出るほどには混乱していただけである。
「そういや田辺は運動会、出ないのか?」
「太陽は苦手だ」
「だろうと思った」

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「クラスメイト/たなべゆうき/なべしま」への2件のフィードバック

  1. 人外ネタが被り悲しみにくれるも、田辺悠希:人外に辿り着いた経緯を語り合いたい気もする。
    話がこれからだというところで収束してしまったのが残念なのだが、突然挟まれる「ジョイント式」で笑ってしまった。
    これはおそらく普段のなべしまさんの古書のような味のある文体と、あまりにもギャップがあり笑ってしまったという原因が考えられる。ツイッターで回ってくるギャル語版メロスや、語彙力の無い小説と似ているだろうか。
    ついては、是非になべしまさんの手による実験的な、古文体×超現代語のコラボレーションが近々見られないだろうかと期待している。

  2. 田辺くんが結局何者なのかがとても気になりました。腕が落ちたところで主人公がたいして驚かずにジョイント式だと解釈できてしまえるのは普段から田辺くんをそういう存在として受け入れているからでしょうか。クラスが田辺くんに毒されているような印象を受けました。この不思議で独特な世界観は自分には出せそうにないので読んでておもしろいです。

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