フルコース/たなべゆうき/さくら

僕の名は田辺悠希。兵庫県に住む大学1年生だ。大学に入ってからというもの、通学時間が高校までとは段違いに長くなったので、毎朝とても早く起きなければならなくて困っている。

あまりにも眠いのでレッドブルに手をかけた。レッドブルは13本一気飲みしてしまうと心臓が爆発して死ぬので、ほどほどに。とりあえず1本飲み干すと、少しだけ眠気が覚めた気がした。それにしても13=死とは、偶然にしても憎いものだ。

朝飯を食べ、歯を磨いて顔を洗って、着替えると朝の4時。そろそろ厩に行って愛馬にエサをやらないと。お腹を空かせていると機嫌を悪くして走ってくれなくなるからね。そしたら死活問題だ。

4時15分。愛馬に乗って駅まで向かう。馬は軽車両なので、車道の端を走行することになっている。日の出はまだまだ先なのでまだ暗い街を走るにあたっては、無灯火だと事故の元だし法律違反になるので、愛馬の首元に懐中電灯を3本つけて灯りを確保している。

乗馬登校の普及に伴い、駅前の駐輪場では、同じ軽車両として駐「馬」することも許可された。ここの駅の駐輪場の管理人さんは、もともと競馬のための競技馬の世話をしていた経験があるので、安心して愛馬を預けられる。

4時46分。僕の最寄りの駅は西明石という比較的大きな駅で、こんなに早い時間から電車が走り出す。とはいえ、そのおかげで僕は実家から大学に通えているのだが。

ここから1時間、普通列車に乗って東に東に大阪まで向かう。まだ暗い空、目も半分しか開いてないような、眠そうなサラリーマンたちは静かに席に座っている。みんな疲れるのが分かっているので、車内では仮眠をとるサラリーマンの呼吸音と電車がレールの境目にぶつかって揺れる音だけが響いている。

大阪からは快速に乗り換えて1駅。新大阪駅につく頃には時間も朝の6時になり、本格的に街が動き始める。すれ違うサラリーマンの表情もこの時間だとさっきより冴えているような気もする。電光掲示板には朝のニュースが流れている。近づくと事件に巻き込まれるという、 「呪われた少年」 についての特集だった。呪われた少年だなんて、なんだか推理漫画のような話だ。

新幹線に乗り換える。のぞみ号は毎日乗っていてもやっぱり興奮する。僕が子供の頃から憧れていた新幹線のぞみ号に、今こうして毎日乗れている喜びをかみしめながら、でもやっぱり眠いので席についてからは自然と眠りについてしまう。課題が多いときは、新幹線に乗りながらノートPCを開き、レポートを書いたり問題を解いたりしている。そういう面では長い通学時間も悪くない。

8時を過ぎ、新幹線は新横浜駅に到着。僕はのぞみを後にして、地下鉄に乗り換える。地下鉄のホームでいつもの友達と合流し、課題の確認でもしてから大学のある駅まで乗っていく。

8時24分。三ッ沢上町駅に到着。同じく1限に向かう大学生でごった返している。 「ゆうき~」 と声のする方を見ると他の友達だ。毎日こうして3人で眠いなあ疲れるなあなんて雑談しながら、キャベツ畑を突っ切って大学まで歩く。

大学では文化を勉強している。自分もいつか日本の文化に貢献して、文化功労者として国から認められる存在になりたい、という将来の夢をかなえるために、その一心で勉強している。そうなったらちょうど親から出してもらっている僕の定期代を返済できるとかそういう裏の話はナシだ。

そういえば、僕の所属している清田スタジオというスタジオで、興味深い文章が投稿されたんだっけ。

「1限チャレンジ」

僕の通学路が紹介されていた。どうやら横浜国立大の1限の授業に、定期運行の始発に乗って通うことのできる最遠の駅がうちの西明石駅なんだそうだ。こうして日本一認定されるのって、こんなどうでもいい記録でも嬉しいものだ。

「悠希くんありがとう。これで次回の課題文も書けそうだ」 振り返るとピンクのパーカーを着た少年がいた。

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「フルコース/たなべゆうき/さくら」への1件のフィードバック

  1. 既存のものを組み立てて作るというのは良くあることですが知っていれば面白いですよね。ただちょっと羅列した感があるかもしれないので、難しいとは思いますが、物語をくずさないようにもう一ひねりしてもいいかもしれません。
    ネタ元が同じスタジオだとなんか近すぎる気がします。例えば、田辺君が「西明石 新幹線 通学」とか調べて検索に引っかかるなどもっと偶然的な出会いにした方がいいのではないでしょうか。

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