ユウキ1/4 /たなべゆうき/ゆがみ

「せっかく仲良くなれたのに」

「新しい学校に行っても俺のこと忘れるなよ」

「こんなにサッカー上手いやつ初めて見たよ。またサッカーやろうぜ」

赤い光さえもいつの間にかなくなっていた暗い夜空の下、みんなに惜しまれて俺は引っ越し前のひと時を終えた。

 

「はじめまして、今日からこの学校に通うことになりました田辺悠希です。これからよろしくお願いします。」

(なんかぱっとしないなあ)

(まあ転校生に期待したところで無駄か)

(…………)

 

実は、俺は去年の出来る男から顔も悪ければ運動神経もない人に変化してしまったのだ。彼は7月31日から8月1日の間に万能なできる男からダメ男になるのである。その後は才色兼備の女、見た目も能力も劣るダメ女へと変わっていき、また万能な男に戻るのである。外見はともかくとして中身はどうなるのかという疑問を持つかもしれないが、記憶はつながっているはずものの、男の時は男っぽく、女の時は女っぽくなっている気がする。

さて、目立たない男としての1年を終えた。その間に小学校から中学校に進学したのだが、特別惜しまれることも無く例によって別の地域の中学校へと転校することとなった。

 

「はじめまして、今日からこの学校に通うことになりました田辺悠希です。これからよろしくお願いします。」

(うわ・・・まじかわいくね)

(こんな可愛い女の子観たことない)

(もう彼氏とかいるのかな?)

 

私はちょっと前まで男だったはずなのに、いやそうだったからかもしれないが、男子との距離の取り方がわからなくなってしまった。もちろんデキる女モードなので十分なコミュ力はあるはずなのだが、それ以上に不安になる気持ちが強く、最初はあまり男子とは話せなかった。

そんな私はかるた部に入った。ダメ男だった頃に一人で漫画を読んで興味を持っていたが、今までかるた相手を見つけられず実戦経験が少なかったため、最初は部員達にかなわなかった。特に、同級生のリカちゃんは強く、10枚くらいしか取れないこともしばしばだった。

そんなリカちゃんはすらっとしていてスタイルが良くて、何より男子と普通に話せるのがかっこいい。彼女のおかげで男子ともしゃべれるようになったのだが、一番好きだったのはリカちゃんだった気がする。今は女の子なんだから男子を好きになったほうがいいんじゃないかとは何度も考えたけれど、「かっこいいのは男女共通だからいいかな」とか考えて自分を正当化していた。2年後にはイケメンになるけどその時にも彼女を好きになるのかなとか、私は恋愛対象になるのかななんてことも考えてしまった。

楽しかった1年を終え、いつもの通り転校する時期となった。女子のみんなにはもちろん、男子にも祝福してもらった。特に一部の男子には慌てて告白もされたが、「中学校離れちゃうからちょっときつい…」なんて適当にあしらっておいた。リカちゃんにも「また会おうね」って言われたので、「うん」と申し訳ないと感じながら口先だけの返事を返しておいた。

 

「はじめまして、今日からこの学校に通うことになりました田辺悠希です。これからよろしくお願いします。」

(ブッさ…)

(なんでよりによってブス女なんだよ)

(誰得だよwww)

 

この中学にも運よくかるた部があったので、そこに入ることにした。以前より明らかに反応速度は遅くなっていたが、今までの経験で何とかやっていけた。

そして、初めての大会の日。

 

「すみません、○○中の人ですよね。○○中にいる田辺悠希さんってご存知ですか」

 

私の頭の中はパニックに陥っていた。どうすれば彼女にわかってもらえるだろうかとか、これほどまでに私に会いたいと思っていた彼女に申し訳ないなとか。その間にいつのまにか3年間経っていたらと思うが、無情にも時は一秒一秒、ゆっくりと進んでいく。彼女との1メートルと3年近くの距離。果てしなく近く、果てしなく遠かった。

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