井戸端会議/田辺悠希/フチ子

「田辺さんって…」

「いつもいつも違ったバッグを持っているよね」

「GUCCIとかシャネルでしょう?」

「そうそう、羨ましい」

「どこからお金でてるの?」

「わからない、このバイトそんなに儲からないのにね」

「掛け持ちしてるとか聞いたよ」

「違うよ、実家がお金持ちなんだよ」

「うそだー、家見たことあるけどそうでもなかったよ」

「え、あの感じでそうでもないの?おかしくない?」

「てかこの辺に住んでるの?」

「いや、私と同じ駅」

「あー普通だね」

「彼氏がお金持ちとか?」

「彼氏いたっけあのひと」

「いた気がする、別れてなければ」

「なんか別れてそうじゃない!?」

「なにその仮定」

「いやだって、わがままじゃん?あの人」

「うーん、波が激しいんだよ」

「波が激しい?」

「なんかさ、めっちゃ優しい時もあるじゃん」

「あー、わかる、私が彼氏と別れそうな時すごく親身になって聞いてくれた」

「あんた田辺さんと仲良いもんね」

「いや、普通だけど」

「そのくせひとをズバッと捨てる時もあるよね彼女」

「あるあるあるある」

「なんか、明日まで提出のレポートがあって早くバイトを抜けたくて泣きそうになりながらお願いしたの」

「あんた真面目だよね」

「いや、うん、でさ、田辺さんあまり掃除しないっていうかすぐ帰っちゃうじゃん?」

「それが腹立つんだよね」

「うん、だから、今日だけはお願いできないかな?って頼んだの」

「下手にですぎだろ、同期でしょ?」

「同期、なんだけどさ」

「ビクビクしすぎなんだよまじ」

「うん、でもね、結局、えーむりーとか言われて帰っちゃって」

「なんなのあいつ」

「やっぱり性格悪いよね」

「うーんでも、優しい時もあるし、」

「だから波があるんだよって話だよね」

「あの波に付き合える彼氏ってどんなだよ」

「いやーなんか私はうまくいってると思うなあ」

「なんで?」

「波というよりも、自分にとって大事なものを決め込んでるっていうイメージじゃない?」

「どういうこと?」

「恋愛相談は大切、シャネルは大事、掃除は不必要、的な」

「あーね」

「彼氏は大事なんだと思う」

「まあそれはある」

「やべ、バス来る」

「あーおつかれ!」

「おつかれー」

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「井戸端会議/田辺悠希/フチ子」への3件のフィードバック

  1. 駅で判断するとか、ただの悪口に終始しないとか、「波というよりも、自分にとって大事なものを決め込んでるっていうイメージ」とか、話がひと段落しなくても乗り物や別れ道などの事情により適当に終了するところが、井戸端会議のリアリティという感じだった。
    実際に体験があったとしても、小説の会話文ではなく、現実世界の文法の方に寄せて書くのは意外にできないものだから、単純にすごい。

  2. 3人いるのでしょうか?女3人寄ればかしましいとはまさにこの通りですね。
    実際の会話は多分セリフとセリフが重なっていたり、相槌とかがもっとあると思うので、井戸端会議感もありながらも整然としている感もしました。

  3. 何人かによって作り上げられる田辺像、というテーマそのものが文章になっていて面白かった。
    この子たち一人一人に田辺さんについて聞いてみたいけれど、ここに出来上がった田辺と個人の田辺と、みんな違うのと思うとすごく不思議。

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