呼んで/たなべゆうき/ふとん

「これからなんて呼ぶの?」

「悠希って呼びたい」

「いいよ」

「悠希」

「サークルでは今まで通り田辺ちゃん?」

「あー、そうか。まあしばらくはそれでいっか」

「私は結局どうしよう、もうさん付けは変だよね」

「そうだね、もう完全に敬語じゃなくなったよね」

「敬語がいいの?」

「いやタメ口でいいよ。でもたまに敬語が出ちゃう感じもいいかも」

「きもちわる」

「気持ち悪いの?」

「うん。」

「そっか…」

「元カノになんて呼ばれてたの?」

「普通に下の名前呼び捨て」

「同じになっちゃうのは絶対やだ」

「じゃあなんて呼ぶの?」

「どうしようねえ」

「ゆーきちゃん。おいで」

「ちゃん付けなの」

「なんとなく」

「じゃあくん付けで呼ぼうかな」

「いいよ?呼んで?」

「やっぱ恥ずかしいからやめた」

「恥ずかしいの?」

「恥ずかしくないよ?」

「すぐ反対のこと言うもんね」

「言わないよ」

「おいで」

「行かないよ」

「来ないの?」

「行くよ?」

ぎゅむ。
あったかい。
心の内側から甘い汁が出てくるみたいなこの感じは、他のことでは味わえないものだと思う。

「来たね。」

「来てないよ」

「悠希」

「…」

名前を呼んで返そうとしたけど、結局どの呼び方もしっくり来ない。

呼ばなくていいか。
代わりに、背中に触れる指に力を入れた。

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