刺さるところのない話/棘/温帯魚

夕暮れ。一つの部屋に男女が二人きりというと敏々な皆様は何か色気のある話を期待するかもしれない。しかし安心してほしい。
なぜなら私が田中圭一で、女が長谷部加奈子だからだ。
間違いなど起こらない。あえて言うなら、無垢な私がこいつと出会ったことがすでに間違いだった。

「ね、棘と針の違いってなんだと思う」
何だ急に。
「いやね、あなたって棘のない男じゃない。下もあんまり刺さらないし。ああ、針は刺すものだけど棘は身を守るためのモノね。すっきりしたわ、ありがと。」
まて、ハリネズミとかハリセンボンとかいるだろ。あいつらはどうするんだ。
「ああ確かに。でもあれじゃない。はーりせーんぼーんのーます、ゆーび切った。ってやつ。あの歌からきてんじゃないかしら。」
ハリネズミは。
「いいじゃない。ハリネズミはかわいいし。そういうあなたはどうなのよ」
そうだな、本数じゃないか。針は一本で棘は複数だ。
「ハリネズミはどうするのよ」
いいじゃないか。ハリネズミはかわいいで。

「そうやって誰かの猿真似ばっかりするからあなたは心に刺さらないのよ。知ってた?」
お前みたいに誰かれ刺そうとするよかマシだ。男だって終いにゃ泣くぞ。ハリネズミのジレンマって知ってるか。
「あら、知らないの?綺麗な花には棘があるのよ。アナタって本当に無知ね」
お前は棘の上に毒まで持っているから始末が悪い。毛虫みたいだな。
「でも蜜もたっぷりあるわよ。食べて確かめてみる?チキンちゃん」
爪も牙もそれこそ針だって持っているだろう。あの悪夢は三歩進んでも忘れられない。
「アタシって罪な女ね」
わかったらさっさと出ていけ。

「ウニが食べたいわ。お寿司を食べにに行きましょう」
お前も無知じゃないか。知っているか。寿司というものは高いんだ。
「じゃあ駅ナカの回転寿司でいいわ。あら、あたしって安上がりな女」
三歩歩いたら忘れそうだな。で、いつからそこに行きたくなったんだ。
「昼ぐらい?」
そうかい。

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「刺さるところのない話/棘/温帯魚」への3件のフィードバック

  1. 会話のテンポが一見すると良いのですが、終始調子が変わらないせいか終盤にはやや違和感があります。と、せっかく名前の設定があるのでもう少し活用しないともったいないと思います。

  2. トゲトゲしい言葉なのに別に致命傷でもなく、かといって互いの頬でも叩くようで、この何とも言えない関係好きです。雰囲気も好きです。文の使い方と内容と、綺麗に噛み合ってて心地よく読めました。

  3. まず初見で誰だってなってそこの印象が結構刺さってしまいました。他愛もないっていうのも難しいものですね。

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