気の早い話/明るい話

「あっ!天の川!」

なんてシーン、最近じゃマンガでも見られない。

織姫と彦星は一年に一度、七夕の夜にだけ天の川を越えて会えるのよ、と園児に言っても、天の川が見えないんじゃあ何が隔てているんだか。もっとも織姫と彦星のベガとアルタイルだってこの辺りでは……保土ヶ谷高地なら見えるかもしれないが、都心ではどうか知れない。

 

先日の朝日新聞で、日本の人口の七割が天の川の見えない地域に住んでいると知った。夜が真っ暗なんていうのはほとんど比喩みたいなものだ。私の住んでいる横浜市の片隅でも沿岸の工業地帯が夜間操業しているので、夜九時の空が赤いとかいうことがちょくちょくある。あなたの部屋も、就寝する前に消灯してちょっとカーテンを開けてみてほしい。暗闇には程遠く、月明かりと共に街灯や隣家の明かりが差し込んでくるはずだ。都心部、渋谷や新宿ならなおのことだろう。建物の背が高いので、空すら見えにくいかもしれない。

 

だからこそ、明かりのない山中などでは夜の暗さに驚く。

 

静岡県伊豆半島の山中に何度かキャンプに行ったことがある。キャンプ場には街灯があり、それぞれの区画でランタンが辺りを照らされて意外と明るいものだ。しかし、肝だめしと称してキャンプ場を出れば、山道を50メートルも行かないうちに全くの闇に包まれる。街灯すらもない、ただ山影が覆い被さってくる。目が慣れるまでは足元もわからず、ただの一本道なのに戻ることもできない。自分の周り360度を闇に覆われたあと、最後に上を見上げると、声も出ないほど満天の星空が広がっていた。どれが一等星かもわからないほど星に満ちた夜空は、普段の生活ではめったに見ることがない。そこには天の川が流れていたし、織姫と彦星の間を人工衛星が無情に横切っていくさまが見えた。もっとも、あまりに暗闇が怖くて私はほとんど星を鑑賞する余裕なんてなかったような覚えもある。

 

「うわ!星スゴーイ!」よりも「天の川が見えるよ!」のほうがなんとなく嬉しい。明るい夜は怖くないけれど、たまには多少怖い思いをしてでも綺麗な星空を見に行きたい。

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