カオス・イン・ワンダーランド

入学式も終わり、桜もすっかり枯れてしまって緑の葉を広げている陽気のいい時期に、その陽気を打ち消すような騒々しい電話がかかってきた。

「青木様のお母さまでいらっしゃいますか。」

「はい。」

「裕くんが頭打っちゃったみたいで、いまベッドで横になっています。病院に行くほどではないのですが、一応何かあったらいけないので学校に来て一緒に帰っていただけませんか。」

 

「よかった~。ゆうくんが頭打ったって聞いてママ心配したんだよ。」

「へっ、ぼくあたまうったの?」

「そうよ~。ってまさか覚えてないの?」

「いや、さっきまでふしぎなことがいっぱいおこってたんだけど…」

「とりあえずどうして頭打っちゃったのか、先生に教えてくれる?」

 

「さっきの休み時間にてつぼうでぶたのまるやきやってたの。りょうくんがいつも体いくのじかんにつかっちゃダメって言われてるたかいてつぼうでやってたから、ぼくもやってみたの。そしたらたかくてつかめなくておちちゃって…」

「それで頭ぶつけちゃったの?」

「わからない」

「本当に覚えてないの?」

「うん。だけどぼくの頭の上を赤い光がくるくるまわっていたんだ。それをおいかけてたらいつのまにかサーカスのピエロの鼻の赤にかわってたんだ。そしたら空中ブランコとか、玉のりとかがはじまって…」

「あら、面白そうじゃない」

「うん、それでとらの火のわくぐりがおわってから、とらのせ中にのせてもらったんだ。そしたらとらが空をとんでって、気がついたらどうぶつえんにいたんだ。そこのどうぶつえんには、とってもおかしなどうぶつがいっぱいいたんだよ。オレンジいろのしゃべるハムスターとか、水いろのラッコとか。」

「すごい動物園だね。先生も行ってみたかったな~。」

「でもいろいろ見てたらあきちゃったんだ。そしたらちかくにいた大きなねこがバスになって、となり町にはこんでくれたの。そこの町ではみんな、たん生日じゃない日がおまつりだって、いつもはしゃいでるんだ。それからふしぎなおうちもいっぱいあったよ。かいだんだけのおうちとか、がいこつのかたちしたおうちとか。

ぼくはおかしのいえでおかしばっかりたべてたら、となりのクラスのこわそうな先生が、おかしだけじゃなくてやさいもちゃんとたべなさいって言ってきたの。そしたらうしろからドスンドスンって音がきこえてきて。」

「怖かったでしょ~」

「ううん、うしろにいたのはウルトラマンだったんだ。先生もこわくなってにげてっちゃった。」

「助けてもらえて良かったねえ。で、それからどうなったの?」

「ウルトラマンにありがとうって言ったら、ウルトラマンは、どういたしまして、でもまだきみにはわすれていることがあるだろう、って言ったんだ。何をわすれているのかききたかったけど、むねのところにあった光がちかちかして、もうじかんだって空にとんでいっちゃった。そこでぼくは何をわすれているのか考えてみたら、そういえば学校に行ってないって気づいたの。でも、どうやったら学校に行けるのかわからなくって、ずっと歩きつづけたんだ。2,3日歩きつづけたら、前に、ねがいをかなえてくれるっていうりゅうがいたんだ。すぐに学校にもどしてくださいって言ったら、ここについてたんだ。ここにもどれて本とうによかったよ。でもまたあの世かいにも行ってみたいなあ。」

 

自分が探検した世界を話してくれる息子の純粋で明るい笑顔を見ると、自分の今までの心配が何の意味もなかったことのようにも思えてきた。

 

 

 

作者補足:文章だけで気づいた人はほぼいないと思うのですが、踏み台にした曲(正確にはその語り部分)があるので、動画後ろに貼っときます。ただ長いので(語り部分だけで5分以上、全体では12分以上)、見なくても全然かまいません。

 

https://www.youtube.com/watch?v=XtBOjm3MrUs

↑語りを含む曲の後半部分(語りは40秒あたりから)

 

https://www.youtube.com/watch?v=RjWy6MCKFiY

↑曲の前半部分

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