電球/明るい話

 

廊下の電球の二つあるうちひの一つ。一人暮らし向けの住宅によくある、廊下にキッチンがあるその真上。それが切れてから二ヶ月が経った。
もう1つが付いているから生活に支障はない。廊下の電球は黄色くて、色も相まって一つだと薄暗いが、リビングや洗面所や玄関の明かりや、キッチンの白い蛍光灯を付ければ気にならない。どうせ遊びに来る友人なんていないのだ。

そう思っていたのだが、スーパーで買い物していて一階に降りるエスカレーターの目の前でラップが切れそうなことを思い出した。下りエスカレーターののり口からラップのある棚まで歩く途中、電球とばっちり目が合ってしまった。
給料日からは折り返し地点、まだそこまで金欠でもない今のうちに、もう一つの電球が付いているうちに買っておいても損は無い。そんな気になった。

家に帰ると、クローゼットにしまっておいた踏み台を取り出した。
取り替える電球の近くの、洗面所とキッチンとリビングの明かりを付けて廊下の明かりは消した。よく分からないけど、付けっぱなしで外したりはめたりしたら感電するかもしれないと思った。

踏み台に乗って手を伸ばし、天井に埋め込まれた電球をくるくると回した。外れた電球をキッチンのシンクに置いて、その下に転がっていたスーパーのビニール袋から新しい電球を取り出した。ボール紙の包装から出す時、きゅうきゅうと嫌な音がした。
ボール紙を古い電球の近くに放って、踏み台に登ってさっきとは逆の向きにくるくる回す。

踏み台から下りて、ボール紙は燃えるゴミに、電球は乾電池とかスプレー缶を溜め込んでいる靴箱の一角に入れた。
そして廊下の電気のスイッチを入れた。

新しい電球は、それはもうぴかっと素早く眩しく付いた。
一方で玄関側の廊下の電球はゆっくりと明るくなってきたがキッチン側には遠く及ばない。
今までずっと、あんな頼りない明かりで暮らしていたのかと驚いた。そして我が家の廊下は本来こんなに明るいものだったのか。

 
キッチンが明るくなるとこれまでせいぜい米を炊いてレトルトを温めるくらいだった料理が楽しくなり、自炊で浮かせたお金で調理器具や食器を買った。
自炊すると野菜のへたや卵の殻、肉のパックやラップ、調味料のビニールなどゴミが増えた。ゴミを朝、正しい分別で毎日出すようになり朝食はもちろん弁当も作る。
必然的に早起きが身につき、夜更かししてネットでエゴサーチをかけたり誰かの悪口が書かれた掲示板を眺めることも減った。夜更かししなくなったことと朝食を食べるようになったことで授業にも集中できるようになった。
そんな生活を続けていると目の隈がなくなり肌や髪につやが蘇ってきた。規則的な生活で代謝が上がったのか、少しジーパンが緩くなり、今まで敬遠していた足が露出されるような服装や化粧に手を出した。
最近イメージ変わったね、そう話しかけられることが何度かあり、クラスやバイトの人たちとプライベートで交流を持つようになった。

友人との食事会を終えて家に帰ると、廊下の玄関側の電球が切れていた。
明後日には友人が泊まりに来るから、早く替えの電球を買いに行こう。

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