この世で最も幸せなこと/明るい話

「ハハハハハ……」

笑いが止まらなかった。

俺のスマホの画面の中で可愛らしいキャラクターが動いている。その可愛らしさの中にそのレア度に見合う能力を持っているのだと思うとさらにこのキャラが愛おしく思えた。

時計を見てみればこのキャラのガチャのピックアップ期間が終わる直前だった。今週は仕事が忙しくピックアップ期間になかなかガチャを回すことが出来なかったのだ。

「何とか間に合ったな。まったく、このピックアップ期間が終わればもう通常時のガチャでは引くことが出来ないなんて今引くしかないじゃないか」

素晴らしく清々しい気分だった。今だったらイベント中の運営の急なメンテナンスも許せる気がする。

このキャラクターを当てるまでに諭吉さんが何人も消えることになったが、それも些細なこと。たとえそのキャラクターが当たる確率がどれだけ低いのだとしても出るまで回せばそれは百パーセントだ。昔の偉い人はこう言った「回せ。回転数が全てだ」と。

 

ガチャは俺の人生。そう言えるようになったのは。三か月ほど前からだっただろうか。その三か月までは無課金兵だった。それからイベントのときに走り足りなくて少しだけ課金をして気づけばそれがいつものこととなり、俺は微課金兵となった。そして三か月前のガチャの新キャラがどうしても欲しくて俺は当たるまでガチャを回し続けた。至福の時だった。

今では新キャラが出ると当たるまで回すのが俺の習慣だ。欲しかったキャラ、新しいキャラが当たった時の喜びは言葉に言い表すことができない。俺の頭が、俺の右手がガチャを回せとささやくようになった。ソシャゲの行動力が溢れることが飯を食べないよりも苦しい。たまにふと「こんなのは所詮データだ、こんなことに金を賭けるなんてバカらしい」という思いが頭をかすめる。

「いや、そんなことはない! ガチャは素晴らしい。あのガチャを回すときの緊張、当たらなかったときの絶望、新しく諭吉を溶かしていくときの興奮。そして何より当たったときの喜び! ガチャはいい。ソシャゲはいい。ああ俺はこんなに楽しいゲームを楽しめて心から幸せだ」

それは心からの言葉だった。だが、くそ運営だけは許さない。もっと詫び石を寄こせ。

 

ピコン、と右手に握っているスマホが音を出した。どうやらメンテナンスも終わり、新しいイベントとピックアップガチャが始まったらしい。

これでまたガチャを回すことができる。俺は満面の笑みを浮かべてガチャを回し始めた。

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