80%妄想/妄想/フチ子

歩いていると、パンジーが咲いていて、イヤフォンから『イエローパンジーストリート』が流れていると、スルスルとその世界に引っ張られていく。曲が変わるごとにその世界はめまぐるしく変わって、大学に着くころにはわたしが何者かわからなくなるほどの「すごい人」になっている。この時間が好きだから、毎日片道40分も歩く過酷な通学路がそこまで憂鬱ではない。お気に入りの曲を聴きながら、他の人よりも少しペース遅く歩き、顔をにやけたりしかめたりしたくなったら日傘や髪で隠す。わたしの生活サイクルに入り込んだ、一つの習慣である。

彼氏と付き合うとき、わたしは常に「この人との未来はあるか」を考えてしまう。付き合ってから彼との未来を描こうと格闘し、不安になり、執着するのだが、一度頭の中でこの人とは未来がないと確定されると、一気に冷めて、無駄な恋愛に思えてくる。そうなるとそろそろ潮時だと思うようになり、何もかもが雑になる。耐えきれなくなって、わたしから振るのだが、毎回相手は釈然としない顔をする。「(歳が上すぎるとか、フリーターだとか、タバコを吸うだとか)そんなの付き合う前からわかってたじゃん、なんで今頃?」ともっともな疑問をぶつけられる。「ごめん、最初はいいと思ったけどやっぱ無理だった、ごめん」と謝り続けるしかない。

最初はいいと思った。その人のことが好きだから、そんな障害乗り越えてみせる、わたしがなんとかする、大丈夫!努力できる!と思い込みをし、乗り越えるための妄想マップを作り出してしまう。わたし自身が安定した職につき、彼が早めに死んでも1人で生きていけるようにしようだとか、経済的に豊かでも精神的に孤独はつらいから、定年後は地域のピアノの先生になって子供に囲まれていようだとか。公務員試験の勉強をはじめたし、ピアノをもう一度ちゃんと弾きはじめた。実行できそうなものはするが、今現在何もできない問題については、妄想をして補完する。妄想して妄想して、結果どうにもならないや、となったら終わり。何十年後のことなんでわかるはずがないし、これは予想ではなくあくまでも妄想であると自分でわかっているのに、この妄想を現実と切り離すことができなくて「確からしい未来」にかわってしまう。

わたしが生活しながら考えていることの中から妄想を全部とっぱらったら何が残るのだろう。朝歩くことが苦痛な修行になることは間違いないし、この人は大丈夫だと行動や性格、地位全てを加味して確信を得なければ付き合えないから、慎重な恋愛ができるようになるだろう。しかしそんなのできるはずないよな、と思うので、妄想のせいかおかげか、同じ楽しみや失敗を繰り返し続けるのだ。

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「80%妄想/妄想/フチ子」への4件のフィードバック

  1. 大学に入るころにすごい人になっているってあるけれど、個人的には大学に入るころに徐々に現実に引き戻されていくように思います。それを軸にして妄想と非妄想の違いを書くのもテーマとしてよさそう。だけど今回の「妄想以外が考えられない」みたいなのには合わないですかね。
    内容的な話では、最初と2,3行目が話が変わっているように思えるので、最初の話を回収するかうまく次につなげるかできるといいと思います。

  2. 妄想で補完して、かあ。確かに。普段妄想をそうやって利用することもあるけど、妄想というワードからは何故か想起されなかったなあ。生き方でしょうか。私が妄想といえば、ヤラシさ、となってしまうのは私が変態だから、って誰が変態だ!
    私をメイクアップさせるのは音楽と妄想力だ。MVごっこなんて遊び?がありますが、私も良くやります。あの循環無敵になったような気がするんですよね。妄想力って結構味方なのかも。

  3. とっても納得というか、共感はしない部分も多いけれど、簡潔でわかりやすい文章だなと感じました。

    「確からしい未来」っていう言葉の不安定さがどうしようもないなと思いつつ好きです。

  4. その時を楽しく過ごすための妄想ならいいじゃないですか。被害妄想とかは迷惑だけど、自分が楽しくなったり後で後悔するにせよドキドキ出来るなら。

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