それ私?/模倣文/みくじ

2016年は夏になろうとしている。夏生まれの僕は、夏が嫌いだ。

大きな川の近くに住むと、本当に虫、いや昆虫と言った方がいいかもしれない、がものすごく多い。もういやだ。

網戸はいくつかの穴が空いてる。一人暮らしだから、誰に依頼して直せばいいのか分からない。というか面倒くさい、お金をかけたくない。意味ないだと分かっていても一応セロテープを貼ってる。一日でも立つと、半分剥がれて、空中に浮いてしまう。

「頑張ってくれ」とセロテープに話をかけながら、物差し指でぎゅーとあれをあみあみに押し付ける。

太陽光で熱々になって焼肉でも焼ければいいのに。

だから窓は開けられない。実は狭いベランダに置いてある空調の室外機と物干し竿の間に、すでに綺麗な蜘蛛の円網が張られている。僕が家賃を払っている空間に自分の摂食活動をするのはあまりにも図々しい。

彼は間違いなく隙を見極め、網戸を突破して僕の部屋に進出しようとしている。狭い部屋に荷物がたくさん置いてあるから網を編むのに最高な環境だ。

天井に居座る巨大蜘蛛の退治はもうごめんだ。

北西向きの部屋は冬の時が日差しが差込めないので寒く、太陽が北回帰線に向かって移動するにつれ午後4時くらいになるとオレンジ色の日光が差込め北側の壁に落とす。ただでさえ暑いのに、お節介な光だ。

実家にいるお母さんとビデオ電話してて、
「なんか黒い虫がずっと飛んでるよ」
「え、あれ生ゴミから出てきたヤツじゃない」

まじか。昨日授業が午後からということで11時まで爆睡していたから当然ゴミ出しに間に合わなかった。

窓からの虫の侵入とずっと戦っていたが、まさか敵が内部にいたとは。やられたな。考えてみると、僕のこの6畳の部屋は虫を育んでいたんだ。

嗚呼気持ち悪い。

最悪までとは言えないけど、最近普通の生活でも着心地悪くなっている。電車から降りて、さりげなく携帯のホーム画面を見て、30分前にまぁまぁ仲良い知り合い2人に送がったLINEの返信はまだ一通も来ない。

嫌われたことをした覚えはないだけどな、なぜ突然世界から置き去りにされた感じになったのだろう。

自分は嫌な人ではない。それなりに社交的である。頭のいい集団に属している。という思い込みがあったからそこ、実はそうでもないと薄く気づき、自分の幻想世界が崩壊する時に絶望感が怒涛のように襲ってくる。

もうしかしたら、今僕は並行世界にいるのではないか。

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「それ私?/模倣文/みくじ」への2件のフィードバック

  1. 並行世界からタイトル取ってるのは分かりますが??ってなりますね。というか自分自身の自己認識に違和感を覚えてから並行世界に至るまでが急。
    そこまでじわじわ来る蒸し暑い気だるさとか不快感があるからもったいない。

  2. 日常生活を基本としながら、そこを飛び越えていくみくじさんのスタイルをうまく再現できています。「僕」という一人称の選び方もいいですね。モノに対して語りかけたり、「お節介な光」などモノが性格を持っているように書けるのは、書き手と本人と読書量の多さを想像させます。

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