変わらない/模倣文/ふとん

じめじめとした不快な空間の中、唯一の救いである旋風機の規則的な風がそよぐ。自分の心と比例するかのように部屋は乱雑に散らかかっている。枕の上には、昨夜使っていた氷枕が染みを広げながら溶けていた。時計を見るとお昼時、つけっぱなしのテレビは週末を感じさせるグルメ特集が淡々と流れている。ボーっとそれを眺めるが内容は何も入ってこない。

 

今日は土曜日、昨日は金曜日。そして明日は日曜日。

 

昨日もいつものような金曜日を平凡と過ごした。世の中は大きな変革が起きた歴史的な日だったそうだ。それでも金曜日は変わらない、変わってくれなかった。何か起きてほしいが、何かを起こす勇気はない。いっそのこと全部ぶっ壊してやり直したい。人はみんな変革を欲している、刺激を求めている、非日常。必要なのはキッカケ、それさえあれば昨日の件のように国をも動かすことだって出来てしまう程に人は新鮮な何かに飢えている。

 

今日は土曜日。私は平凡に絶望する。久しくコーヒーでも淹れてみるが、やはり変化はやってこない。昨日の変革は私の平凡をかき乱してくれるだろうか。思いに耽りながら、ミルクをたっぷり注いだラテを啜った。

 

午後、パソコンを開く。世の中では昨日の変革が、平凡をじわじわと非日常が覆って行っているようだった。もしかすると、私が思っていた以上に非日常は近づいているのかも知れない。微かな昂ぶりを感じながらも、やはり何も変わらないのではないかと、私は再び絶望する。

 

日曜日。すっかり高揚感が抜けてしまった世間の多くは変革を後悔していた。何で変革を望んでしまったのか、人々は何を期待していたのだろうか。日常が平凡で不満に満ちていたとすれば非日常は刺激的で華やかであると、そう信じてしまったのだろう。しかし、彼らは絶望する。残酷な現実に。

 

明日は月曜日。また私の日常が始まる。

 

―――思考停止

 

 

0 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 5 (0 投票, 平均点: 0.00,  総合点:0  |  
投票する為にはユーザ登録する必要があります。
Loading...

「変わらない/模倣文/ふとん」への3件のフィードバック

  1. 平凡な日常を書くっていうのは1番難しいことだと思います。この文章も主人公自体には何一つ起こっていないのに読める文章になっているのはすごいです。世間にどんな変革が起こったのか気になりますね。

  2. 何か気づいたら周りの国々荒廃しちゃってた感じがある世界観を匂わせていてたまらないですね。ただ、よくよくかんがえてみると普通の週末の生産性のない過ごし方っていうのも好きです。

  3. 世界で何か大きなことがおこったからといって、それこそパンデミックでも起きない限り月曜日はやって来るんですよね、平日さんの襲来です。

    じわじわと来る絶望感が何とも言えませんね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。