相似/模倣文/T

雨に唄えば、なんていうのは嘘で、心地よいものではなく、だらだらと空から滴る雨粒に湿るだけな気がする。涼は雨の日は楽しいなんて言って、お気に入りの赤い色の傘を開いて笑っている。水を差すものでもないから、別の生き物を見ているような気分だった。だから不愉快でもないし、涼は何も悪くない。

「雨の日っていいよね」

「楽しくない」

「そう?好きなんだけどね」

涼のことは嫌いじゃないよ、そう言おうとして顔を見ると、今日のイヤリングは紫陽花のモチーフで、小さな花をみっしりと固めた面白い形だった。

「それいいね」

「これ」
と涼は嬉しそうに首に手を這わせる。
ブラウスの襟に、見えるか見えないか、限界のところに赤い石の付いたネックレス。

「この前見つけたんだ。誕生石と同じ色」

そう。でもそれね、私それ聞いたよ、前にね。忘れた?何度も話しておきたいものなのか、きっと単純な理由だろうけど、うん、似あうよ返す。私もきっと、涼の中では時々ぼんやりとした記憶で、現実味がないんだろうなと思う。それに付き合う涼も、嘘つきなんかじゃなくて、きっと素直で、そういうことは黙っているだけなんだ。今は、その赤い傘好きだよと言うだけで、精一杯だけど。

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「相似/模倣文/T」への3件のフィードバック

  1. 音が綺麗。内容をどうやって解釈していいか分からないけどなんか綺麗だなーっていうところが、Tさんっぽい。少なくとも私はそう思って読んだ。
    どう解釈したらいいのかなっていうのは内容がわからないっていうのだけではなく、なんかほわっとした寂しさとかすーっとする愛おしさみたいな、なんかそんな感じをどう折り合いつけていいのかわからない、みたいな。

  2. ほえ、これが模倣文でも提出者の名前がTさんになってる。本人だったらどうしようとおそるおそるコメント。
    透明感がTさんっぽい。直接的なことをあまり言わないのも。
    最近は小説でないからかもだけど、彼の文章はもっと、流れていく感じがある気がする。静かなんだけど、きらきら流れる水みたいな勢いがあって、それを目で追うみたいに瞳が落っこちてく印象。

  3. ほう…っていうため息が出る感じの文章でしたね。あんまりTさんの文章をまじまじと読んでなかったのでアレなんですけど、確かに似せてきているなと思いました。にじんだインクみたいにぼやぼや〜ってしてて、うまくつかめない感じ。

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