イミテーションガール/曲/やきさば

さむい。なんでこんな真冬の朝早い時間に呼び出されなきゃならないのよ。しかも来てみれば指定されたのはカフェのテラス席、アホかよ…。

イライラしながらマフラーに顔を埋めていると目の前にあいつが来た。お前が呼んでおいて待たせてんじゃねえよ。

「おまたせっ」「めっちゃ待った」「曲聴きながら来たの、大森靖子のイミテーションガールってやつ」「ふーん」

聞いてもないし興味もないので適当に相槌をうつ。ていうかまず、待たせたことに謝らんのかこいつは。頼んでいたホットココアをすすりながら、こいつの顔にそれをぶちまけたくなる。

「この曲のPVね、すっごくかわいいの!ピンクがいっぱいでわたしもこんなことやってみたいって感じ!しかもね、わたしの大好きな玉城ティナちゃんも出てて…もうほんとうにキュート!大好きな…「ていうかさ!!」

耐えきれなくなってわたしは彼女の言葉を遮った。けど、ギリギリココアをぶちまけるのは堪えた。感謝しろよ。

「今日呼び出したのは何?そんなことが言いたいからじゃないでしょ?こんな真冬のテラス席でクソ寒いんだし、あんたの好きな曲とかクソ興味ないから、はやく本題に入ろうよ」

「あれ、ななちゃん覚えてたんだ。寝ぼけてたみたいだし覚えてないかと」

わたしが切り出した瞬間コロッと態度を変えやがった。こいつ。

「覚えてるわよ。あんなの嘘に決まってるでしょ。まーくんの前ではいつでもかわいいわたしでいたいもの、そのためだったら寝ぼけたふりなんていくらでもするわ。あなただってそうでしょ?あー、まーくんのベッドで、まーくんの隣で寝るの、気持ちよかったなあーー」

「ちょっと!!!!」

マミがテーブルを叩いた。あーあ、せっかくのホットココアがちょっとこぼれたじゃない。ゆっくり味わおうと思ってたのに。

「まーくんが好きなのはわたしよ!!ちょっと一緒に寝たからって何?調子に乗んないでよね!!」

「はあ?何を勘違いしてるの?まーくんが好きなのはこのわたし!!一緒に寝るときずっと頭を撫でてくれたのよ!あんたそんなことやられたことある??そっちだって調子に乗んないでよね!」

「あ、」

さらに言い返してくるかと思ったら、マミがわたしから視線を外した。つられて目をやると、なんとあのまーくんがいるではないか。しかもこちらに気づいて近づいてくる。

やばい、急いで姿勢を正し髪を整え、鏡でチェックする。マミももちろん同じ。わたしたちはなんとか見られても大丈夫なわたしを即興でつくりあげて、まーくんを出迎えた。

「やあ、おはよう、2人が一緒なんて珍しいね」

「う、うん、ちょっと2人でお茶しようと思って」

マミがきゅるるんっと効果音でもきこえてきそうな態度で返す。上目遣いのアヒル口。それかわいいと思ってんのかよ。きも。

「そうなんだ、いやー、2人ともかわいくて絵になるなあ。そういえばね、僕今日すごくかわいいお友達を連れてるんだ、紹介するね」

見ると、まーくんの背中から1人の女の子がひょこっと顔を出してきた。これは……。なんだか変な汗をかいてきた。おかしい、さっきまでクソ寒かったはずなのに。隣にそっと目をやると、マミも同じような顔をしている。思わずつっこまずにはいられない。そう思ったときだった。

「クソブスじゃねーかよ!!」

2人の声がハモった。

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