うそつきの嘘/曲/ノルニル

     わたしが殺したのだ、と君が呟いて、嘘吐きの僕はかける言葉もなく項垂れる。枯れかけのアガパンサスが、ぎりぎりの窓辺で咲いていた。

     人の苦しみを肩代わりすることはできないけど、共犯者の僕にしかできないことがある。だから僕は、君と同じだけ背負うよと、そう嘘をついた。

 

     夜が来るのが怖いなら、すべて投げ出して逃げてしまえばいい。君の手を取り、傾いた日に向かって走りだした。太陽よりも疾く風を切り、何もかもを追い越して西へ、時速1400キロで空を駈ける。

 

     なんて、実際には嘘に決まってる。無理だ。喉から音を上げて呼吸をしても、息が続かない。足並みは次第にとぼとぼとし、やがてはその歩みさえ完全に止まった。

 

     やっぱり、届かなかった。どうしても僕たちは、ここから逃げられない。「ここではないどこか」なんてない。
    だらりと力が抜け、指がほつれたその瞬間、引き戻されるように強く手を握られた。すこし驚いて、感触を確かめるように握り返してみる。

     山の端に日が沈み、ぬるい風が頬を撫でる。わずかに輝きを残す、時の境界線はやがて夜が生まれる場所。

 

     夏の日暮れは、景色をくすんだ水色に染める。誰そ彼時、という名の通り、となりにいるはずの君の姿が見えなくなっていく。それでも、不思議と恐れは生まれない。
     たとえ暗闇が世界を覆ったとして、繋いだこの手を離さなければきっと大丈夫だと、それだけ信じていれば他には何もいらなかった。

 


 

嘘 (bermei.inazawa) from “berpop melodies and remixes”

うそつきライアー (茶太) from “睡眠都市”

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「うそつきの嘘/曲/ノルニル」への2件のフィードバック

  1. ふわっふわっしてました。なんかこう全体的に。それが良くも悪くもあったというか……! なにも残らないとも言えるしなにも残さないような文章(いい意味)とも言える。文章とは人の印象に残るのが大切なのか否か。

  2. 確かに残らないといえば残らない。なんでこんなにもふわふわとして印象に残らない文をかけるのか、書いてあることと筆者の距離が近すぎるのか遠すぎるのか。不思議な感覚。中島みゆきだったかな、歌詞の中に会えてすごく具体的な事物、たとえば窓際に飾ってある花ではなくて、カサブランカと歌うと、個人的な話になって、リアリティーが増すと言ってた。

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