みんな大好き★/曲/仄塵

どうもこんにちは、アンパンマンギターです。

純正プラスチック製な僕には4本の弦がついている。しかし誰がどう弾いても、ジャジャとしか言わないおもちゃ中のおもちゃだ。ちなみにアマゾンで「おもちゃ ギター」のキーワードで僕と一緒にヒットするものたちが、1/10サイズバイオリンのような、ちゃんとした音が弾けたり、少なくとも形が本物のアコギと同じで、落ち着いた木調がその本気さを物語るヤツばっかりだ。だから僕の仲間は、明るい色で楽しさを押し付けるアンパンマン楽器シリーズだけだ。

しかし僕は楽しくない、できればFenderやGibsonの家系に生まれたかった。一流スキルの持つアーティストの愛用物になる可能性が残されるモデルになりたかった。世界中7台しかない幻のギターに名乗りたかった。一瞬にしか響かない音楽の永遠なる輝きを証明できるものにさえなれれば、たとえ黒いケースの中にずっと横たわっていても嬉しさで笑い声が漏れそうだ。

現実は、僕はアンパンマンのおかげて売れた知育玩具に過ぎない。アンパンマンはギターを弾けない、たぶん。こどもはみんなアンパンマンが好きであろう、とテレビの前に娘を座らせた育児初心者の親。もしかしてうちの子も天才音楽家になれるかも、と大人の世界に娘を放り込む親。そんな「こどもらしくいてくれ」と「早くをおとなの世界に慣れてくれ」という二重願望が詰まっているのは、僕だ。

小学生のころ国語や算数より美術の時間が断然楽しいというあの娘が、高校生になっても絵を描くことが大好きで、とうとう将来画家になると進路を決めたあの時、美術の授業中にこっそり物理の問題集をやってる隣の男の子を見て、はじめてみんながみんな絵が好きなわけでもないと気づく。美術と音楽が100%の擁護を得られるのは、こども相手の時だけ、所詮そんなもんだ。

ぱっつん頭の娘が僕をジャジャ弾いてロックを鳴らした。僕は嬉しかった、その4本のやっすいプラスチックの弦に、はじめてリズムを乗せてくれる人がいた。まるでマーシーが弾いてくれてるような、歌うのはヒロトなんだけどね。

「信じられないことが起こってしまうのは、世界中誰も信じられなかったから」ということを理解しているのかと問われたら、たぶんそれは理解していない、いや絶対してない。じゃ自分の身体を他人にあげて食べてもらうアンパンマンは、こどもに正義の意味を分かってもらうことを望んているのかというと、たぶんそれもないだろうな。

 

甲本ヒロトが老若男女に愛され、世界共通だと?

そんなこと知らんがな。

 

(ザ・クロマニヨンズ 『キスまでいける(short ver.)』)

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