上履き/曲/みくじ

Good Shoes/Galileo Galilei

かすかに蝉の声がする。
外は雲ひとつない真っ青な夏空で、冷えきったこの美術室とは別世界だ。
半袖のシャツと膝丈のスカートとふくらはぎより下のソックスだけでは肌寒くて、ジャージを羽織ってだらしない格好をしている。
ネクタイは鬱陶しいから隣の机に投げた。
美術室は普通の教室2つ分の広さがあって、私は後ろからも廊下からも2番目の席から無人の美術室を見渡してた。
一つ前の席には描きかけの自分の絵が無造作に置いてある。
夏休みのうちに仕上げる予定だったし、まだそのつもりではあるんだけども。
先生が戻って来るのを待ってからはじめても、間に合うだろう。

冷房のきいた美術室の机はひんやりしていて、去年買い替えたばかりだからつるりとして綺麗だ。
美術室の机なんて絵の具やなんやで汚れまくるのが常だが、新しいから綺麗に使ってくれと先生が強く言うのでまだぴかぴかしている。
その上に腕を伸ばして突っ伏して、顎をぺったり付けて首だけ上げる。
きっと横から見たら、机の板の部分をこの字で覆うような体勢だろう。
そうして足を伸ばして上げると、視界に赤いラインの入った自分の上履きが見えた。
私の通っていた高校の上履きは学年によって色違いのラインが入った白地の運動靴みたいなもので、私の学年は赤だった。
この上履きも机と一緒で、買い替えてそんなに経っていないから真っ白だ。
生徒数の多い学校だったから、上履きや制服や体操着なんかの販売車が決まった曜日にやってくる。
しかし私の足が小さ過ぎて、この上履きは取り寄せて2週間ほど待たされてようやく買えた。
こうやって机越しに眺めても、私の靴は小さい。
取り寄せた上履きはそれでも少し大きいようで、右のつま先で左の踵を押すと、かぽりと脱げてしまった。
反対も同じように靴を落として靴下も行儀悪く手を使わずに脱いで、何年もサンダルなんて履いていない白いペンキをかけたような、青く静脈の透けた、足。

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「上履き/曲/みくじ」への1件のフィードバック

  1. 主人公の心情を書くことなく描かれた主人公の見る風景が涼しげで美しく、何より最後に体言止めされる足の描写が、いい。そこに「青く静脈の透けた、足」はずるい。そのずるさをもっと頻繁に使ったり、一文を短くしても素敵かもしれない。
    歌の歌詞をそのまま使うのではなく、主人公にストンと落ちたあと、咀嚼されて出てきたイメージソングの様な気がして大変綺麗。心情なんか書かなくてもいいし、ストーリーなんてなくてもいいから、音の美しさと情景描写の緻密さで詩的な文章も書いてみて欲しい。

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