壁/曲/どみの

ねえ、今日午後暇?

夕方から暇だよー
なに、東京の方きてるの?

じゃあ17:30に舞浜駅集合で!

え、今日?w
おけおけ、行くわー

(みのりがスタンプを送信しました。)

 

上京して4年目の7月。高校の友人からいきなり召集がかかった。

だいたい、同い年は就活真っ盛りのこの時期(まあ、私はいろいろあって今大学3年生を満喫してますが、)、例外なく彼女も就活中のはずだ。

 

17:30過ぎ、テーマパークのエントランスで待っていた彼女は、ごちゃごちゃしている周りと違い、シンプルな出で立ちで私を待っていた。

 

おー冬ぶりー

いきなりごめんね。とりあえず、遊ぼう!

彼女に初めて出会ったのは高校時代。典型的な青春をおくり仲良くなったのだが、更に親しくなったきっかけは受験期だったと思う。

お互い進路に悩みに悩みまくり、面談の居残りで放課後多くの時間を同じ教室で過ごした。

 

ねえ、就活どう?

だめだめ。まだ内定ゼロ。どうしよーね。

 

そういう彼女の横顔は、焦っているというより、しょうがないと言っているようだった。

 

今日も面接行ってきたよ。

お疲れ様です。

個人面接全然喋れないんよね。人前で喋るの苦手すぎる。

じゃあ今日の手応えは…

 

そう問うと無言でまた同じような顔をする彼女。

 

受験の時もお互いいろいろあったもんね。

そうやね。やっぱり生きるって難しいわ。

急に哲学、どうした?

最近思うんよね、定期的に壁が出現するのが人生なんだって。

ほう。

でもその壁を乗り越えるか、壊すのか、道を変えるのか、壁にもたれて休憩するか。どういう行動をとってもいい。そう考えると選択肢を増やしてくれる壁っていいやつなんじゃないかと。

 

なんとなく彼女の言いたい事は分かる。壁だと思っていたのがただの張りぼてだったり、幻想だったりもすることもある。壁という存在自体、乗り越えるという方法自体を考え直した方がいいんじゃないかって。固定観念に囚われすぎると苦しくなり、私たちは生き辛くなる。

アトラクションに乗り終え、外に出るともう暗くなっていた。

 

次なに乗る?

ねえねえ、パレード始まってるよ!

パレード見る?

いや、今日は乗りまくる。ってことで、あれ乗ろう!

 

彼女が指さしたのは、パレードの反対側にあるアトラクション。フロートや人だかりが私たちとの間を遮っている。

 

大周りして行こう。

 

そう言って、人混みに突っ込む彼女の後を追う。はぐれないようにそっと手が繋がれる。

ふと、人垣の間から見えた遠くにパークのシンボルが、闇の中照明で光り輝いていた。

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「壁/曲/どみの」への1件のフィードバック

  1. 人生の壁とテーマパークで行く手を阻む人の壁がうまく使われていると思う。人の台詞が鉤括弧で括られていないのは何か意図があってのことかは分からないけれど、地の文とセリフの接地面があやふやになる感じが、柔らかめの歌の雰囲気に合っているし、セリフをよりテーマっぽいところまで落とし込んでいる感じがして、個人的には好き。
    声に出された言葉を地の文の中に組み込む方法を使う時に、基礎の地の文の書き方をもう少し工夫すれば、より詩的で美しい表現が可能になるんじゃないかと思う。

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