いつか絶対/曲/きりん

今年五月、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席フルート奏者にして世界的ソリスト、エマニュエル・パユが来日した。海外の演奏家の中では来日も多く、その華やかな演奏と甘いマスクで日本でもとても人気の高いフルーティストである。
そんなパユがハチャトゥリアンの協奏曲をやるという。本来バイオリンのために描かれた曲を、ランパルというこれまた伝説みたいなフルーティストが自分が吹きたいがために編曲してのけた代物で、もう本当にとにかくかっこいい。これはチケット代に7 千円払ってでも聞きに行くべきだろうか!?いや、いちかばちか当日学生券にかけてみる手もある……!日本でも人気のあるパユの公演だ。当日までの一か月で全席完売もありうるが、学生券は2千円、差額5 千円は無視できない。買うか賭けるか。と、悩んでいたらある先輩が学生会員らしく、事前に学生券を入手できるらしい!飛びつくようにしてお願いした。
うきうきしながら時は過ぎ、演奏会1週間前。バイトのシフト表に目を疑った。演奏会当日になぜか私の名前が入っている。いったい一か月前にこのシフト表を提出した私は何を考えていたのだろうと愕然としたが、このバイト先、シフト変更したい場合には自力で代わってくれる人を探さなくてはならない。現状一番下っ端の私にそんなことができるわけもなく、つまりシフトの変更は不可能。いっそ風邪でもひこうかと思ったが、現状のシフトでも人手が不足しているのを身を持って知っている。ロッカールームで泣きそうになった。結局、当日私はバイトへ行った。あまりに辛くて、誰にも行けなくなったことを言わずにいた。チケットを融通してもらった先輩にさえ、だ。頭を無にするように働き、ようやく解放された23 時過ぎ。帰り道でケータイの着信をチェックしていると、同じように先輩からチケットを買った知人からLINEがきていた。「今日どうしたの?」その場にしゃがみこんで、ちょっと泣いた。

いつか、いつかこの曲を生で聞きたい。

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