ミッドナイト清純異性交遊/曲/リョウコ

身体に悪そうな色をしたストローから、薄くなった100%グレープフルーツジュースが口内に流れ込んでくる。
カップから噴き出た水滴が、ぼたぼたと、私のスカートやふとももや、灼けたアスファルトに落ちてくる。
と、向うから厭にゆっくりと、緑色の鉄の塊がやってきた。パイプから吐き出される熱いガスが、向う側の景色を歪ませる。
ぷしゅう、と間抜けな音がして、私の目の前で止まるバス。
私はその場にカップを捨てた。
バスから怠そうに降りてくる地味なスーツの男たちを睨みつける。
皆一様に疲れた様子の男たちの中で、最も地味で狡賢いネズミのような顔の男を見つけた。
鞄の中の、黒い柄を掴んで引き抜いた。
ギラリと、刃が光る。
私は包丁を構え、全力で地面を蹴った。

「私、タクヤのためなら全然死ねるから」
教室のど真ん中、学生の本分を忘れたジョシの一群の中から放たれた、特に甲高い声が耳を突いた。
タクヤのために死ねる彼女は、昨日まではタクヤのためならマイナス五キロも余裕の彼女だった。
タクヤのためならマイナス五キロも余裕の彼女は、今、ジョシの群れの中央に置かれたポテトチップスを制服に粉を落としながらバリバリと豪快に食している。
馬鹿みたいだな、と思った。そしてあれがきっと、“好き”の正常なのだ、と思った。

ずいぶんひどい人を好きになってしまった。

「どうしよう、わっちゃん」

一つ年上のくせに、なにかあると「どうしよう」と私を頼ってくる先輩が、肌色面積の多い自らの写真を私に送ってきたのは先週の木曜日だった。
お金をもらって男と寝る。
私の初恋は、ひと月前まで毎日のようにその危険なお遊びを繰り返していた。

「よく聞く話ですね。こういうの」

拡散されたくないくせに、私のスマホに自分の痴態を送ってきてしまう先輩に、私はもうどうしたらいいかわからなくなった。
もうどうしたらいいかわからないくらいに、先輩は可愛い。
この可愛い人のためならば、私はなんだってしてあげられる。

「大丈夫」

心臓が激しい収縮を繰り返す。
耳の血管に血が流れる音がする。
誰にも到底言えないような、濃くて重たい秘密で満ちた先輩の、先輩と私の部屋。

「大丈夫ですよ」

蹂躙されてたまるか。
腕の中で熱く湿って涙を流す先輩の身体を、私は強く抱きしめた。

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