カミングサマー/夏/ネズミ

 

「あっつ…」

日向にでた瞬間、容赦なく照りつけてくる太陽の光に思わず声が漏れてしまう。昨日の肌寒さとは一転して、今日は30度を超えるらしい。それにしても朝からこの暑さ。全く、昼間が思いやられる。部活の時間までには涼しくなってほしいと願うばかりだ。

熱のこもった自転車のハンドルをつかみ、まだ眠い体を起こすようにペダルを漕ぎ始めた。走り出すと朝のさわやかな風が顔に当たって心地が良い。学校までの道はやや下り。あまり漕がずとも自転車は進んでくれる。

 

 

そういえば今日から体育がプールになる。この時期のプールはまだ水が冷たい。特に最初のシャワーは心臓が止まりそうになる。この時期に限らず、プールはあんまり好きではないのだけれど。まず単純に荷物が増える。部活着の他に水着を持っていかなければいけないから。あとは平泳ぎが苦手。全然進まない。絶対後ろを泳いでる奴に追いつかれる。そしてとにかくその後の授業が眠い。まあプールのあとじゃなくても授業は寝るんだけど。授業面倒くさい。はやく夏休みこないかな。

夏休み入ったら入ったで、今度は部活ばかりの日々だ。毎日炎天下で走り回らなければいけない。何より夏休みの頭には合宿がある。毎回の練習の後に何本ものダッシュが待っている地獄の5日間だ。始まった瞬間、いや始まる前から終わるまでずっと帰りたいと思っている。1年で最もホームシックになるときだ。

 

30分も自転車を漕いでいるとさすがに汗が滲んできた。同じ方向へ向かう同じ制服の人たちの数が増えてくる。男子の制服は夏でも長ズボン。内側には何の意図かよくわからないポリエステル製の布みたいなものがついていて、汗ばんだ肌にくっついてくる。これが非常に不快だ。

学校に着く直前にある坂道。ここまで汗をかかまいとどれだけセーブしようとも、ここを登れば必ず汗が噴き出してくる。日差しはさっきよりも確実に強くなった。ここからはたまに富士山が見える。朝、この坂を登っているときに富士山がを拝めれば、その日はラッキーというのが僕のジンクスだ。今日は見えないけれど。

坂を登り終えれば、目的地まではもう少し。学校の隣にある林ではちらほらとセミの鳴き声がしていた。校舎を見上げるとどの教室も窓が開いている。学校に着くと、案の定全身汗だくだ。また着替えのTシャツを持ってこなければいけない季節が始まったな。

もうすぐ夏がくる。

 

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「カミングサマー/夏/ネズミ」への4件のフィードバック

  1. 個人的にネズミ自転車シリーズが好きです。
    自転車に乗っている時の感情を細々と、エッセイを読む時は自分の体験と併せて考えていたりするのですが、自転車はいつも物語のように読んでしまいます。自転車のような、機械ほど速くない疾走感も心地よいペースだと思います。
    あとすごく夏が輝いていて、あんまりだと目が焼けそうな気がしてしまいますが、夏休みの楽しさが湧いてきます。

  2. 地の文と周りの情景をリンクさせる表現が上手いなと、割といつも思っている。ただ、その割にストーリーに絡ませた心情が描写されないのがもったいないなと今回思った。表現や文章のリズムはとても心地よいものだと私は思っているので、是非、ストーリーもつけてより楽しめる文章に挑戦してみてもいいのではないだろうか。

  3. 夏の日の自転車で駆ける疾走感があって心地よい文章でした。
    夏になると、何気無い日常でも絵になるみたいなところありますよね。夏のずるいところです。
    あとすごく共感できるのは夏=部活の合宿、という鬱な方程式ですよね。本当に嫌でした(笑)。

  4. なんだか暑苦しく、何一つ夏のいいところが書かれていないのに、最後の一文で、爽やかで前向きな気持ちにさせられてしまうのが、不思議な感覚だった。
    自分で好き好んで始めたはずなのに、常に苦痛とやめたいという思いしか湧かない運動部のリアリティ、プールのシャワーの冷たさと合わせて、懐かしの「夏らしさ」の象徴だと思う。

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