温泉入浴物語/夏/猫背脱却物語

夏休みは絶対短い、ってポンキッキーズで習ったものだから、うかうかもしてられない。夏は割と勝手に始まっているのだ、遅れをとってしまっては困る。21歳の夏、最初で最後の21歳の夏。

というわけで、まだ春学期中なのに、土日使って、草津温泉に行きました。

 

※今回は、ただ温泉に入るだけのお話です。

 

それでは早速温泉のほうへ。脱衣場から浴場へ続く半自動ドアのボタンを押す。私にとっての夢の国へ。

入っても丸腰の体が冷えないのは、浴場に立ち込める湯気のおかげだ。視界をぼやけさせるだけが湯気じゃない。生身の体を優しく包み込んでこそ、湯気なのだ。

まずは洗い場へ。お湯に浸かる前に体を洗うのはマナーとしての理由が大きい。けれど入浴に臨む前のそれには、神事の前に自らの穢れを落とす禊かのような心持ちさえ覚える。洗い場で浴びるシャワーは、どんな滝行よりも私を清くしてくれた(個人の感想です)。

 

身も心もさっぱりした。いざゆかん、お風呂。

 

桶を手に取り、立ち膝の姿勢で飛沫を最小限にしながらお湯をかける。浸かる前にお湯の温度を、文字通り肌で感じることで体をならす。お湯と私が温度という尺度で心を通わせるためにも、この掛け湯はなくてはならない。二、三度繰り返したところで、そろそろ入浴と行こう。

一歩ずつ温泉の中に足を進め、壁際にタオルを置きつつ肩まで浸かる。水温は40度強といったところか。

少し熱めなのと、草津温泉特有の泉質とで、最初は肌へピリピリとした刺激が走る。この刺激が、草津の湯に浸かっていることを私の体に理解させる。ここへ来たこと、ここでまた風呂に入ることが出来たことを実感するのだ。

少しすれば刺激も弱まり、安らかなぬくもりが私を包み込む。浸かっている間は、どれだけ身動きを取ろうともお湯は私の周りをつかず離れずあたため続けてくれる。

本当、お湯と結婚したい。お湯になら抱かれてもいい。

じわじわと体が温まってくる。お湯の温度と私の温度が近くなるように、私とお湯の境界が曖昧になり、私の輪郭が溶けていくようだ。事実、指とかがシワシワになるのは輪郭がぼやけている証拠だと思う。そんなこんなしていると、体の温まり具合が最高潮に達してくる。やべ、このままじゃのぼせる。出よう。

 

しかし行く先は脱衣場ではなく、露天風呂である。
夏に外で熱い風呂なんて、と思っている輩はまだまだヌルい。36.8度くらいにヌルい。

 

山間の草津の空気はカラッとしていて、吹く風は夏であっても涼しかったりする。内風呂で温められた体をあてるにはもってこいであり、それこそこの気候は夏に草津へ来るべき大きな一因である。

草津の風を感じ、何も考えず露天風呂に入る。そこにある環境すべてが一級品。目を閉じただけで、現実か幻想かとゆめうつつを彷徨いかけた。

 

ああ、幸せだ。

 

風呂から上がり、早めに敷かれた宿の布団で、晩御飯まで寝る。まどろみという言葉がこれ以上似合う瞬間が世界にあっただろうか。悠久に眠っていたかのように感じた眠りから目を覚ました時に、ただ思った。私の夏が、始まっていると。

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「温泉入浴物語/夏/猫背脱却物語」への2件のフィードバック

  1. 温泉いきてええええ…ってなりました心から。温泉行ったことないんですよね…いいなぁ温泉…ほっとすぷりんぐ…。

    食レポみたいな感じで見ることができました。言葉選びがいちいちポップでサクサク読めた気がします。

  2. 湯船が苦手なので夏の温泉の気持ちよさに共感がもてません…。暑いお湯は特に苦手なので36.8度が限界ですすみません。

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