【11/10開催 終了後懇親会】秋学期WS課題③ 気になるあの子 〆切水曜昼12時

とりあえず要点だけまとめておきます。

・11/3(木)は文化の日でお休み。

・スタジオ内の異性のうち、だれか一人について書く。名前を知らない人でもOK。形式は自由

・提出が伸びて、水曜お昼12時までに。コメントも木曜お昼12時まで。承認面倒なんで遅れないでね

・グループワークに加え、立食形式が復活。時間配分は30:30:30?

・当日は18時ごろから520で懇親会。4限後から仕込みや飲み物買い出しに行くので手伝ってください

・それに関連して、仮決まりですが11/7(月)授業終わりに買い出しに行きます。40人以上のパーティになるので相当買うものが多いです。今回の予算は5万弱。ヒマな奴は積極的に手伝え

以上です。

食べたい/食べたい/リョウコ

ひと月ほど前から、一人で食事ができない。
もともと不精者で、自炊に精を出す方ではなかったから、以前もコンビニ弁当やスーパーの総菜ばかりでまともな食生活とは言えなかったが、それでも一応日に三回はきちんと何か口にしていた。
「食べたい」と「食べる」が直結していて、お腹がすいたら食事をする、という流れが特に意識しなくてもちゃんとできていたのだ。
しかし、夏季休暇が始まってから約3か月、チクチクと細い針でいちばん弱い臓器を集中攻撃されるようなストレスが毎日続いたおかげで、秋の始め、私は一人で食事ができなくなった。
最も酷かった時期は、アルコールと水と牛乳だけで胃を満たしていた。勿論、満たされる訳が無くすべて水洗トイレに吸い込まれていったけれど。
2週間の実家での療養を経て、いまでは一応三食きちんととるようになったが、それもかなり気を張らないと未だに一人では難しい。
一人でお腹いっぱい食べると、罪悪感から半分はリバースしてしまう。だから私が一人で食べられるのは腹五分目まで。今の主食はコンビニの春雨ヌードルである。
私は「食べる」ことに憧れている。
自らの意思で食事をする、それもほぼ無意識的に食事ができるというのは、凄いことだ。
身体がもう無意識で「生きてえ!」と燃料を欲している。
手垢のついた言い方ではあるけど、やはり「食べること」は「生きること」である。
生きたいという意思と、生きようとする身体がガッチリ手を繋いでいる状態が、人がうっかり忘れてしまう位には当たり前なのだ。
さて、これから木曜三限の清田スタジオに向かうべく、私は昼食をとろうと思う。
「生きたい」という私の意思と、食べることへの罪悪感を盾に食事を放棄せんとする私の胃袋。
勝敗はいかに、である。

2016秋WS② グループ分け

みなさんお疲れ様です。今回の中の人はさくらでお送りします。

10/27WS分のグループ編成が終わりました。遅くなって申し訳ないです。

さて、今回は議事録でもお伝えした通り匿名コメント投稿でお願いします。ログイン維持設定の方も一度ログアウトした状態でのコメントをよろしくお願いします。また、今回はグループ分けの引き継ぎ作業等でこうしてグループ分け発表が遅くなったため、コメントの投稿期限を本日木曜日の12時までとさせていただきます。

 

ではでは、よろしくお願いいたします。

以下、グループメンバー

Aグループ:ネズミ、なご、フチ子、ふとん、みかん、waku

Bグループ:さくら、温帯魚、なべしま、きりん、印度、生野菜

Cグループ:JBoy、縦槍ごめんね、やきさば、YDK、ねおき、いせ

Dグループ:ばたこ、オレオ、仄塵、エーオー、味噌の、杏仁

Eグループ:T、ヒロ、みくじ、五目いなり、竹、ピエロ

Fグループ:ノルニル、猫背脱却物語、三水、θn、あんぱん、袖の香

Gグループ:mdegonth、Gioru、リョウコ、ちきん、奴川、露子

Hグループ:ととのえ、峠野颯太、どみの、ほのほ、rascal、あおいろ

 

浮き足立つ/食べたい/ふとん

学校がどことなくそわそわしている。通り過がる人たちの顔は平然としているのに、少しだけ空気に活気を感じる。

あと2日が過ぎてしまえば始まるのだ。先生の話を聞いているふりをしながら、頭の中で音楽を再生してダンスの振りを最初から最後まで確認したり、本番でつけるアクセサリーの組み合わせをイメージしたりしていると授業が終わる。当日学校に来ないでただの4連休にする人もいるけど、もったいないなと思う。

おへそか脚を出す衣装を着るために、白米やパンをほとんど食べていない。朝は豆腐ときのこ、昼は野菜炒めと焼き魚、夜は大豆のシチューとか、健康オタクみたいな食事をする。

そのくせに授業の合間にチョコレートを食べるし、眠気覚ましにブラックではなく砂糖入りのカフェオレを飲んじゃうんだけど。

中途半端とはいえ、これを世間はダイエットと呼ぶのかもしれない。食事のことを考えるようになったのはここ半年くらいだ。去年までは体重計に乗るのも身体測定の時だけだったし、友達がカロリーを気にしているのをふーん、って受け流して好きなものを食べていたけど、自分でやってみて初めてわかった。食べるもので体は変わるのだ。

あまり我慢した覚えはないけど意識したら5キロ近く痩せた。すると体が軽いし、太ももが少しだけ細くなったのがすごく嬉しい。

こういう時にSNSにインドカレーやラーメンやスタバのフラペチーノとシナモンロールを毎日のように載せてる女子を見ると、正直引いてしまう。いいの?そのままの見た目で気にならないの?、とか、余計なお世話だろうけど。

食べたいと痩せたいは真逆のようで、そうではない。食べたいものがカレーやラーメンじゃなくて、サラダやこんにゃくだったらいいのだ。
カロリーが高いおいしいものを摂取する幸せを知ってしまった体をうらむ。

公演が終わったら、朝ごはんをホットケーキにしていいし、フレンチトーストにしてもいい。外側が固くて中がもちもちの、クルミとかレーズンが入ったパンも食べていい。昼は学食で鯖の塩焼きと一緒に白米を注文していい。夜はきのこと鶏肉のたけのこの炊き込みご飯とか、豚バラ肉で野菜を巻いて焼いたのとかを食べていい。飲み会で梅酒を何杯も飲んでいい。リバウンドしない程度に。

学祭よ早くこい!

口にする/食べたい/露子


「誰にも言えない秘密の話」、ねえ…。そうですよね、誰にも言えないから秘密なのに、それでトークしろってほんと無茶ですよね、フフフ。このカードでるたんびに思う。…でもまあ、さっきは大越さんのエセ不倫体験とか、あれすごかったなあ、ね、ほんと。うん、だから、私もちょっと、ひとつ、秘密を暴露してみますよ。えー、うん、なににしよう…。いや、そんなに秘密ないんですけどね、いやほんと。ハハハ。う~ん…あんま大した話じゃないけど、あれにしよう、うん、秘密話します、ふふっ。

えっと、大学時代、一人暮らししてたんですよ。そう、上京。あれ?地元北海道だって私言いましたっけ。なんでばれてるんだろう。ああそっか。ははっ、すっかり忘れてました。

そう、それで東京で一人暮らし。大学生活は絶対都会で過ごしたかったんです。ばっちりメイクして、オシャレな服を着て、オシャレな友達とオシャレなお店でランチ……サークルのカッコいい先輩とあわよくば…みたいな、もう、完全無敵なキャンパスライフを送るんだって、中学生の時から心に決めていたんです。

ええ、彼氏はすぐできましたよ。サークルのカッコいい先輩。アハハッ。ほんと筋書き通り。人生ちょろいわ~ってめっちゃ思ってました、あの時期は人生の黄金期だったな~。

その彼氏がですね、私の家に来たいって言うんですよ、まあ当然のことですけど。でも、当時住んでたのはほんと悲惨なところで。とにかく家賃の安さを追求した結果こうなった、みたいな。中身も外見も完全ボロアパートだったので…あんま人呼ぶのとか嫌だったんですよね。とても華の女子大生が住むようなところじゃないって、ほんと下宿先だけは不満でした。結局、四年間住んだけど。ふふ。

そう、だから、彼氏にも来て欲しくなかったんですけど、彼が汚くても狭くても気にしないよって言ってくれたので、というかすごく、しつこかったから。付き合って一ヶ月くらい経った頃かな?とうとう、いいよって言って。彼氏がうちに来ることになったんです。

まあ、超掃除するじゃないですか。もう、台所からユニットバスから窓から…部屋中隅々掃除したんです。私は少し、潔癖症というか、自分のものであっても汚いものに触りたくなくて。けど、めんどくさがりなんでこまめには掃除しなかったから、排水口とか結構すごいことになってて。髪の毛やらなんやらの毛がつまって、もう一面カビだらけで…。なんか、全体的に白いんですよ。当時、私ロングヘアだったのでもうぎっしり髪がつまってて、それを白いヌメヌメがコーティングしてる感じで。見てるだけでヌメリが伝わってくるというか…見たことありません?もう、絶対手で触りたくないし、ゴム手袋越しでもあのヌメリは感じたくない…。そこで思いついたのが、箸でその、詰まっている毛をすくう方法でした。

あれなんですよ、新生活のためにひと通りそろえるじゃないですか。それで、なんか、300円均一のお店で、10組セットの箸買っちゃって。ファンシーなやつ。箸ばっかたくさんあって、持て余してたんですよね。そう、だから、そのうちの1膳くらい汚物処理用にしてもいいかなっと思って。

まあ、それで箸を持ってね、排水口に向かったわけですよ。ラーメンの麺をすくうようにね、毛の塊の下に一本を入れて、挟んでそのままスーッと上にやるわけです。そしたら、ヌメッとした塊がヌメッとしたままズルンッとすくえてね…手も汚れないし簡単に取れたから、こりゃ良い、頭良いぞ私って自分を褒める気持ちになりました。あんまりきれいに塊が取れたもんだから、それを顔の高さまで持って来て、しばらく見つめていたんです。 ぼーっと。

そしたらね、なんだか知らないけど突然、舌に、ヌメッと冷たいものが触れた感じがしたんです。なんだろう、いきなり口にナメクジでも這入り込んだような…そんな感じ。………ハッとして横の鏡を見たら、ね、口から長い毛を垂らした自分が映ってるわけです…。え?あ、思ったより引かれてるなあ、やっぱ話さなきゃよかった、アハハ…。

まあ、それ以降、私はお箸を使ってご飯を食べるたんびに、あのヌメッとした感触を思い出してしまうようになったんです。ん?味?味は覚えてないですね…そういえば。なんでだろう。うーん、それにしても、あの、感触はなかなか結構、でした、よ。 うん………。

…はい、これで私の秘密は終わり!うーん、なんか、そんなに、引かれるつもりじゃなかったんだけど、な。次のテーマいきましょっか。

 

グルメ/食べたい/なべしま

祖父の代から一世紀、積み重なった蔵書が地層と化した中に幾つかの虫喰いを発見した。切り絵でもこうは綺麗な曲線を描けまいと思われるほど、絶妙な齧り跡である。幾つかの名詞と、助詞とが欠けていて、読解は可能だが居心地の悪い部分で文が途切れる。不快に耐えつつ文を追っていると、三匹の紙魚が生息していることが判明した。
一匹の好みは米であり、炊いた米や雑炊、お粥などが余さず消えていた。私は前後の文脈や水分量からそれを推理しなければならなかった。
二匹目は西洋かぶれなのかパンばかり食べている。酷い時には穫り入れ前の麦でさえ餌食になっていた。父親の代に数を増やした洋書も、辞書で調べたらしくbreadとある部分が狙われている。ただ勉強不足か、breakfastの途中まで食べ、慌てて中止した様子も見受けられた。
残りの奴の判別には時間がかかったが、どうやら祖父の代の蔵書が好みらしく、最下層が広範囲にわたって食い荒らされていた。その中でも特に年代物の酒類ばかり狙い澄ましている節があり、高級志向な奴もいたものだ。

私も一家を継ぐ身であり、雑多な蔵書は家宝である。紙魚をのさばらせておく訳にはいかない。よって紙魚どもには米やパンを馳走してやったのだが矢張り口には合わなかったらしく、仕方ないので総じて追い出させてもらった。晴天、わさわさと庭の木陰に逃げ込んだのを見届け、本の間にラベンダーの香りの紙片を挟み込んでおいた。これでもう二度と帰ってくるまい。気が向けば、要らぬレシピ本などをくれてやろうと思う。

おかずのクッキング/食べたい/やきさば

休日、太陽が昇りきったあとに起きた日は、なんだか体が重くありませんか?ぼーっとしているとお腹まで悲鳴をあげてきます。そんなときはおもいっきって起き上がってみましょう。顔を洗って、着替えたら、欲望のままに台所に立ってみましょう。

まず、冷蔵庫の中身を確認します。なんの食材があるのか知らないと何も始まらないですからね。冷蔵庫を開けると、ピーマンと茄子が。うーん旬の食材がありますね。これはグッジョブ。それに豚のひき肉もある。これはもう何を作るか決まりましたね、茄子とピーマンのはさみ揚げです。それでは作っていきましょう。

最初に、ピーマンを半分に切って中の種を取ります。水で流しながらとっていくとすごくやりやすいですよ。茄子も同じように縦に半分に切っておきましょう。へたも切ることなく、丸ごと使ってしまいます。
それが終わったら豚のひき肉を詰めていきます、ここでワンポイント。ピーマンや茄子の内側、つまり豚のひき肉を詰めるところに片栗粉をまぶしておきましょう。そうするとお肉が詰めやすくなってあとでとても揚げやすいです。

ピーマンは、ピーマンの肉詰めと同じ要領で詰めていってください。種があったところにお肉をぎゅうっと詰めて。ピーマンが破れないように注意してくださいね。お父さんのぽっこりおなかのように、ピーマンの身に対して少し楕円型に詰めるととてもボリュームがあって見た目がいいです。
茄子は半分に切った大きい方を下敷きにして、黄色い身に対して平行にお肉を置いていきます。茄子の形に添わせてきれいにおいていってくださいね。幅2㎝くらい詰めればもう充分です。半分に切ったもう1つのほうで蓋をして茄子も完成になります。

そうしたらあとは茄子とピーマンに、片栗粉、とき卵、パン粉を順番につけていってあとは揚げるだけ。お鍋に油をひいたら、火をつけて、作ったものを鍋にダイブさせましょう。このとき油はねには十分気を付けてくださいね。
食材が浮いてきて、きつね色にこんがり揚がればもう完成です。さっと油を落としてお皿に盛り付けましょう。彩り追加にレタスなどを一緒に盛るととても見栄えがいいです。

大きめの茄子まるごととそれに対してころころっと小さなピーマンが可愛らしい。
炊いておいたあつあつの白ご飯を茶碗に盛って、みそ汁も入れればできあがりです、茄子とピーマンのはさみ揚げ。

それではいただいてみましょう。市販のソースをたっぷりかけて、シンプルにいただきます。
まずはピーマン。うーん、ピーマンのほのかな苦みと、沢山詰めた豚肉の甘みが合わさってなんとも絶妙な味わいです。ピーマンを口に入れたら、すぐにあつあつの白ご飯。最高の組み合わせです。
次は丸ごと茄子、いただきましょう。一口かじると、外は衣がサクサク、中は茄子がトロトロに仕上がっていて、もうほっぺがとろけそうです。やはり茄子はトロトロになるまで料理するのが一番おいしい。その茄子のとろみに豚肉の肉汁が合わさって、もうこれ以上の幸せったらない。落ちそうになるほっぺを抑えながら、白ご飯を口に運んでください。なんとも穏やかな気持ちになりますよ。

***

どうでしょうみなさん。とてもおいしそうでしょう?今晩のおかずにいかがでしょうか。
そうだ、もしよかったら味見してみませんか?茄子を一口大に切ったものを少しおすそわけ。
ほら、お口を開けて、あーーん。

さんぽが楽しい/食べたい/エーオー

〈たべたもの〉

⓵薔薇のはなびら
高校生のとき、ホールに花が飾ってあって処分されると言うので「じゃあ頂戴しても問題ないだろう」と、一片。大体ここが始まりだった。
濃いピンクの薔薇だったが見た目のようなきらびやかな味はしていない。繊維感、野菜の味。たぶん、紫キャベツの外側の葉の部分とか、可食部じゃないとこの苦さがある。

②さくらのはなびら
お花見のついでに二片。せっかくだから食べ比べしてみようと、淡い紅色の染井吉野と白い山桜のものをひとつづつ。
結論として「はなびらも採りたての方がウマイ!」。落ちていたものはすこし萎びているので硬かった。山桜さんは散りたてほやほやのものを入手。はなびらが薄く、舌触りが優しい。口のなかではんなり溶かしていきたい気分。繊維質なのでそうはいかずに噛む。薔薇ほど味はしなかったけど、まあ苦い。染井吉野より色のない山桜のほうが苦みが濃い。

③コガネムシ
夏は蝉の抜け殻を揚げて食べるという目標を掲げていたのだけど、レポートに忙殺されいつの間にか秋の風が吹いていた。無念。「ピスタチオ感覚でいける!」という売り文句につられてお店で。
揚げられているものが出されるので、黒い。美しいメタルグリーンの光沢はなかった。けど、虫の腹の部分。蜂のお尻のような壺のかたちをしたところ、古びた豆電球の硝子みたく透けていて、レトロ。中身もっと詰まってるのかと思った。
おいしいよ。嘘じゃないよ。海老みたいな味。

④オオグソクムシ
これ本当においしかった。海老の味。お節に入ったでっかい、皮を自分でむいて食べるタイプの海老の味。濃厚。

⑤コスモスのはなびら
オレンジ色のものを一片。触感と味はいつものような繊維質なんだけど、花びらのねもと、とんがった部分には蜜がついていてすこし甘い。これは発見。

⑥ルリマツリのはなびら
漢字で書くと“瑠璃茉莉”。紫陽花みたいに、小さな花が集まって毬のよう。折り紙みたいに鮮やかな青紫。シンデレラのドレスの色。
これ、今まで食べたはなびらの中で一番おいしかった! 舌触りが滑らかで、噛みしめると落雁みたいにきしっと鳴って、上品に砂糖水に変わってとける感じ。

〈たべたい〉
かまきりの鎌のところ、手羽先みたいだから。メロリナスカシジャノメ、水飴みたいに透明なまるいちいさな翅の端っこがカキ氷の苺のシロップに似た薄紅色をしてる。あまそう。彼岸花の花弁、紅生姜みたいだから。

夢/食べたい/あおいろ

夜の町は沈黙しているように見えて、なにか得体の知れないものが潜んでいるような気配がする。吸い込まれそうなほどに夜空が黒いのは、単に暗いからだけではないと、俺は思ってしまう。そこにはどうも、あの黒い霧がかかっているような、そんな気がしてしまうのだ。

 

俺の先祖は獏と繋がっているらしい。獏はもちろんあの伝説の生き物で、日本では悪夢を食べてくれるとかなんとか言われているやつ。先祖で何があったか詳しいことは知らないが、とにかく俺も人の悪夢を食べる。

深夜から夜明けに向かう時間帯、俺はふわっと空に浮かび上がると、街を見下ろして悪夢の気配を探す。そしてそれを強く感じた人の寝室へ向かうと枕元に立つ。俺は夜に獏として活動している間は、壁や天井などの障害物を通り抜けることができるため、それくらいお手の物だ。

悪夢は黒い霧として俺に可視化される。深呼吸の要領でそれを吸い込むことで、悪夢を食べることができるのだ。そしてその間、俺は悪夢の内容を見ることができる。小言がうるさい親だって、いつも威張ってる同級生だって、悪夢の中では無力で恐れおののいている。人の弱みを知れたような、この小さな優越感には癖になるものがある。

……なのに。

 

「俺が獏と繋がってるのは知ってるだろ?」

「うん」

「獏ってのは、人の悪夢を食べるんだよ」

「そうだね」

「人によって見る夢の傾向っていうのは大体あるんだけどさぁ。……何でお前は全く悪夢を見ないんだよ」

彼女は、あははって笑った。

「そんなの私もわかんないよー別に好きで楽しい夢ばっかり見てるわけじゃないし。あ、かといって悪夢を見たいわけでもないけどね?」

そう、俺は気付いてしまったのだ。彼女の悪夢を、まだ食べたことがないってことに。

そいつとは小中高が一緒で、何度も同じクラスにもなったことがあるいわゆる腐れ縁ってやつだ。これだけの期間があれば、悪夢の一度や二度見てもおかしくないだろうに。

「そういえば、私の友達はいつも悪夢見るって言ってたよ?あっ、とは言ってもなんかトトロが出て来たりしてかわいい夢だったりするけど。今度紹介しよっか?」

そういう問題じゃねーんだって。心の中で舌打ちをしながらも、以前に彼女とそんな会話をした覚えがある。そのことに気付いてから、俺は毎晩彼女が悪夢を見ていないか、確認に行くのが日課となっていた。

 

 

「……あれ、この時間に来てるのは珍しいね」

時刻は日付が変わる頃。ちょっと気が向いたため、俺は彼女の部屋に来ていた。そんな理由で俺はよく彼女の部屋にいるから、最近はもう驚かれもしない。

「お前、悪夢は見ないって言ってたけど、じゃあどんな夢見るんだよ」

「えーっとね……本当に色んな種類の夢を見るけどね。でも、どこか探検してたり、どこかに向かってることが多いかも。すっごい非現実的な空間のこともあるし、電車に乗ってたりとか、リアリティあることも多いかなぁ」

「何かに追いかけられたり、高いところから落ちたりする夢は見ないの」

「あ、落ちる夢はちっちゃい頃見たことある。でも、夢だったからふわふわ落ちてて、楽しかったかも」

「……お前、強いな」

えーそうかなー?とこお耐える彼女は、満更でもなさそうだった。

「じゃあ、ひたすら課題に追われてるとかそういうのは」

「そこまでリアリティーあるのは見たこと無いなぁ」

やっぱり、彼女はどんな種類であろうと悪夢は見ないのか。俺は思わず肩を落とす。

「とにかく」

彼女はふわっと微笑んだ。

「私は、楽しい夢しか見ないんだ」

……その勝者のような余裕と自信は、一体どこから湧いてくるのだろうか。

もう、いいや。

俺はふいと振り返ると、地面を蹴って軽く宙に浮いた。

「あ、もう行っちゃうのか」

「うん」

「いってらっしゃい」

俺はそれには答えず、そのまま壁をすり抜けて夜の町へ浮かび上がった。

 

ああ、きっと。俺は一生彼女の夢を食べられないのだろう。だけど、それを分かっていながらも、俺は彼女が悪夢を見るようにと、密かに呪わずにはいられない。

「おやすみなさい」

どうか、良い悪夢を。