ほんとの姿/夕方/ピエロ

 16時頃。わたしは16時頃が一日の中で一番嫌いだ。

 4限が終わった。授業が4限終わりでこの後に何の予定もない今日のような日のこの時間帯は、ますます嫌いだ。席を立って教室を出る。まあ帰るしかないよね。とぼとぼ歩き始めて電車に乗る。Twitterを開く。「今日これから空いてる人いないー?」てつぶやきかけて、やめる。よくこうつぶやいている人はいるけど、なんていうか、この世の人々は、こうつぶやいていい人とつぶやいちゃいけない人に暗黙にカテゴライズされる気がして、そうなったら自分は前者に割り振られる自信はないから、やめる。おそらく後者だしね、リプ飛ばしてくれる友達いない。そうわかってるけど、もしかしたら一人くらいいるんじゃないかって淡い期待持ってるけど、でもここでつぶやいて、いなかったら期待した自分傷つけちゃうし、やめる。タイムラインを眺めてると、友達がリアルタイムで楽しんでいる写真が回ってくる。今この一瞬という二度と訪れることのない時間を楽しむ権利はこの世の人々全員に平等に与えられているはずなのに、その権利を上手に使い更には他人に対してそれを顕示するその友達と、上手に使えていない自分。明らかなる自分の負け組感。この差って、どっから生まれてくるのかね、はっきりわからないけど何か、これもここに暗黙の何かが働いている気がするんだよね。ふと、友達のアイコンが彼氏とのツーショットに変わっている。別に彼氏とかいなくてもリアルなんか充実するし…って思ってたけど、あれ、負け組感感じちゃってるとか、全然充実してないな。そんなこんなで最寄り駅に着いた。家に向かって歩き出す。歩きながらすれ違う、多分もう二度と会うことのない人たちに目を通す。その人たちの表情とか服装とか態度とかを見る。この人たちも、ひとりひとり何かしらの事情を抱えてるんだな、たぶんここまで生きてきて、何にもなかった人っていないよね。お疲れ様です。…見ず知らずの誰かに対してこんな気持ちになれる自分って、めっちゃ優しいな。目の前に高層マンションが見える。この高層マンションが建てられるまで、どれだけの人々の労力を要したのだろう。その人々は、何のためにこの高層マンションを建てたのだろう。自分の家に着いた。エントランスに警備員がいる。いつも暇そうで、特に表情一つ変えることなく立っている。この人は、果たしてこの仕事がほんとうにやりたい仕事なのかな。もしかしたら他に、本命の仕事があって、だけど何らかの事情で。

 16時頃。わたしは16時頃が嫌いだ。前からずっと思ってたけど、15時と16時の差って、たった一時間なんだけど、他の、例えば12時と13時とかのおんなじ一時間の差よりも、もっとおおきい気がする。15時って、おやつの時間、まだ一日終わるまでたくさん時間がある気がする、何でも出来る気がする。16時って、もう一日終わってきちゃったな感、今から何か始めるには遅い時間な気がする。そんな16時頃は、結局こんな、考えても考えなくても何も変わらないだろうことを考えてしまう。何の生産性もなくて、考えた後にはマイナスとプラスの入り混じったよくわからないものしか残らない。何も残らないのと同義。なんて無意味な時間。だからわたしは16時頃が嫌いだ。

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「ほんとの姿/夕方/ピエロ」への3件のフィードバック

  1. ひと段落が長い!一面が字で覆い尽くされると、ネット媒体では読みにくいかなあ、と。

    世の中には二種類の人間がいる論は、よく先生も言っているし、わたしもそうだなと思う。自意識過剰は重々承知でTwitterで遊ぶ人を募れる人と、募れない人、放課後充実してる人としてない人で分けられる。でも、それを分ける発想になるのはたいてい自分が「そうじゃない人」側にいる場合であって、「そう側」の時は頭にない。文中で道ですれ違う人に目が向くところがあるが、この人たちの事情に思いを馳せてみると、この人たちにも「そうじゃない」要素があるような気がしてくる。みんな「そう側」「そうじゃない側」を持っていて、その比重で優劣が決まるような、そんな気がしてくる文章だった。

    言葉遣いにこだわりがあまり感じなかったので、日々、いろんな文章を読んで、好きな言葉があったら記憶したり真似したりしていくといいと思う。

  2. 平仮名と漢字のバランスが心地よくてよかったです。幼い感じが出ていて、内容とも合っていたように思いました。
    前半の羅列は意図的なものでしょうか。徒然なるままの雰囲気で面白いと思いましたが、スマホの画面だと少し読みづらいかもしれません。(三水)

  3. 畳み掛けるような文章に少し呑まれながら読みました。
    12時-13時の1時間と、15時-16時の間の1時間の差についてはなるほどなと思いました。鋭い視点ですね。

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