ある夕方/夕方/やきさば

夕方はわたしの活動開始時間だ。大学に行くというルーティーンが終わればもう自由。放課後はわたしが何をしても許される、はずなんだけど。

月曜日。
いつもあるはずのバイトがなかった。最近新人さんがたくさん入ってきたことで、希望シフトが前より削られるようになっていた。大学の授業が終わった夕方17時から、それこそルーティーンのように毎週こなしていたのに、それが突然なくなると自分の生活にぽっかり穴が開いたようでなんだか落ち着かない。いつも月曜日はバイトだとまわりにも話していたから、いきなり今日一緒に遊ぶ友だちもいない。帰り道、とりあえず1人で家路を歩くけれど、急にできてしまった暇な時間を前にどうしていいか途方に暮れていた。手持無沙汰というかなんというか。まわりはわたしと同じように1人で歩いている学生が多かったけど、少なくとも今の私とは「帰り道の大学生」という肩書き以外に共通点がなかった。イヤホンを一瞬とりだしかけたけど、音楽を聴く気にもなれなくて、だらんと両腕を重力に任せていた。試しにスマホ歩きでもしてみるか、とスマホをとりだしてみるがこれといって面白いこともない。家に着いたら何をしよう、この時間も暇だけど、家に帰っても暇であることに焦り始めた。夕方からの時間はいつも予定が入っていたからこんなときどうすればいいのかほんとうにわからない。とりあえず、あの授業の課題でもやっておくか………けどだるいな。

足を止めた。目の前にはいつもの光景、私の家のドア。何事もなかったかのように中に入って敷きっぱなしのふとんにダイブした。大の字になってなんとなく「疲れた…」とつぶやいたけどそれはふっと宙にのまれた。誰も聞いていなかったし、それに別に疲れてなんかなかった。ただ座って話を聞いていただけだ、いや、聞いているふりだったかもしれない。でもこの反省?も誰も聞いていないし必要ないや。

いつの間にか寝ていたらしい。寝方が悪かったようで右腕の血が固まっているのが分かる。しびれるほどではないけど、確実にずっしりと痛みがあって、ねちっこくて治まりそうにない。

起きても何も変わっていなかった。わたしは本当に世界の外側に放り出されたみたい。隣人宅のTVの音とその笑い声がまあまあの薄い壁を越えてかすかに聞こえてくる。何をそんなに笑うことがあるんだ。

次の日の火曜日。
サークルだった。

水曜日。
バイトだった。久しぶりの。

木曜日。
サークルだった。

金曜日。
友だちと遊んだ。たまたま予定が合った。

土曜日。
バイトだった。

日曜日。
サークルだった。

月曜日。
夕方はなかった。

0 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 5 (0 投票, 平均点: 0.00,  総合点:0  |  
投票する為にはユーザ登録する必要があります。
Loading...

「ある夕方/夕方/やきさば」への3件のフィードバック

  1. 自由を求めてる割に、ふと与えられた自由は上手く使えない事のもどかしさが出ていると思いました。とりあえず寝ちゃっても、事態も気持ちも全然好転してないとことか生々しくて好きです。ただオチに持ってくまでの一週間が少し冗長に感じてしまいました。なんだかんだ友達と遊んでるやん、となりました。

  2. 授業が終わったあとに予定がなく、暇なときのグレーな気持ちを一緒に体験しているような気分になりました。

  3. 月曜日は夕方がない、のあたりにミステリー風味があっていいですね。楽しすぎて夕方の感覚がなかったのか、あるいは人間が滅亡したか。
    全体的に憂鬱ですね。夕方浪漫派としては夕方の力を持ってしてもそんなにも退屈か!という気持ちがしないでもないですが。
    竜頭蛇尾感がするので、この後半のさっぱりした文を続けていても良かった気もします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。