不思議な時間/夕方/waku

茜色に染まった空を見上げながら、いつもの帰り道を歩く。夕方の空の色や空気や匂いは、なぜだろう、懐かしくて、温かくて、どこか切ない、そんな不思議な気持ちを生みおこす。

 

「いーしやーきいもー やきいもー」

歩いていると、秋の夕方らしい声が聞こえてくる。

小さいころはこの声が聞こえるたびにおねだりしたけれど、一度も買ってくれなかったなー、なんて思うけれど、大きくなった今自分で買うこともない。こういうものは欲しがっているときが幸せで、いざ手に入るとなると別にいいやって思ってしまうよね、なんて思いながら横を通り過ぎる。

そのまま進むと、公園から遊んでいる子供たちの声や足音が響いてくる。あたりにはオシロイバナの香りが漂っている。

「もう帰るわよー」「やだ!まだあそぶ!」

なんて声も聞こえて、自分の小さいころを思い出し、自然と頬が緩む。

 

巣に帰る途中のカラスが、カァカァと鳴きながら上空を通り過ぎる。

空の上の方が紫がかってきて、きれいなグラデ-ションになっている。人工的にはつくることができない、その不思議で美しい色を見ていると、その色を作った神様だかなんだかに感謝の気持ちが湧いてくる。そんなことを考えた自分をおかしく思いながら、進んで行くと、コンビニから体操服を着た、部活帰りの中学生たちが出てくる。練習を頑張ってお腹が空いているのだろうか、おいしそうに肉まんを頬張っている。自分も部活に一生懸命になっていたころがあったな、なんて感傷に浸りながら歩く。道路わきにある家から夕食のいい匂いがしてきて、久しぶりにお母さんの作ったご飯が食べたいな、と少しホームシックになりつつ進むと、家が見えてくる。

 

いつのまにか空は全体が濃紺になっている。

懐かしさと温かさと切なさがごちゃ混ぜになったような感情を生む、不思議な時間、夕方。この時間にわたしの心は癒され、「明日もまた一日頑張ろう。」と思えるようになる。

 

わたしは今日の夕方にさよならして、家の中へと入った。

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「不思議な時間/夕方/waku」への3件のフィードバック

  1. 帰路の夕方の描写が一つ一つ丁寧で、リアルに風景が想起されます。だからというべきか、もっと内面的なもの描写があったら映えるんじゃないかと思いました。

  2. ここまで夕方に関するピュアな想いを綴った文を今のところ初めて見たので新鮮でした。家路の風景描写が細かくて自分も一緒にそこにいるみたい。ただ語尾が「〜っている」ばかりで単一だったので少し寂しかったです、ちょっと工夫するとまた違った味が出てくると思います。

  3. 夕方やそれに関連するいろいろな鍵がぴったりときますね。
    でもそれらをあまりに包括的に纏めてしまっているので、印象に残りにくい気がします。それだけ共感を集めているということなのでしょうが、もうすこし夕方の何かに対する拘りを見てみたいです。

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