曹達/夕方/みくじ

視界の上半分が赤かった。

茶色いトタンの上に真っ赤な夕焼けに包まれた黄色く光る半円が乗っていた。

 

ぎしぎしに固まった首を動かすと、どうやらバスの中で寝過ごしたらしい。一番後に乗った自分と運転手の他には誰もいなくなっていた。

乗ったのはよく使うバスだったけど、いつも俺が降りた先でこんなところに道を逸らすのか。

とりあえず次のバス停で降りて逆向きのバスに乗ることにしよう。どれくらい待つのか分からないけれど。

 

しばらくするとバスが停車し、勢い良く空気の抜ける音がして車体が少し傾いた。

 

バスを降りるといかにも夏の終わりの夕暮れ時といった感じの蒸し暑い空気に包まれた。ここは人気のない商店がのようで、時間が時間だけにほとんどシャッターが半分ないしは下まで降りていた。

 

真向かいのバス停の後ろの店はまだシャッターが降りきっておらず、自分の目線より少し上くらいだった。

昔懐かしい駄菓子が並んでいて、ここは駄菓子屋だとわかる。自分が都会育ちで、近所に大型スーパーはあれど駄菓子屋に入った記憶が無かったから物珍しかった。

 

ぴゅうっと音がして振り返った。

 

「兄ちゃんも食べる?」

 

小学生、と言うと年齢の幅が広いが、子供と接する機会が無いので学年まで検討がつかない。そこに立っていたのは少なくとも5年生とか6年生とかではなさそうな、幼い少年だった。

オーケーサインのように右手の人差し指と親指で挟んでいるのは、音が鳴らせる輪っかの形のラムネ菓子だ。わざわざ声をかけるために唇から外したらしい。

 

俺が驚いて固まっていると、再びその少年はその白い輪を唇に加えて、また短くぴゅうっと鳴らした。

そして後ろ手に持っていたらしい残りが少なくなったパッケージから、同じ白い輪をつまみ出し俺の胸元に向けた。とは言っても彼の手は俺の胸元より下に有ったが。

 

勢いに負けたというのだろうか、何となく受け取って口にくわえた。そっと息を吐くと、すきま風にしては少しうるさいかな、という感じの音がした。

 

「兄ちゃん下手っぴ」

 

何で俺は見ず知らずの小学校に罵倒されたのか。視線をそらして、今度はゆっくりと多めに息を吐く。

 

ひゅー

 

さっきより幾分ましになったが、どこか気の抜けた音がした。なんだか馬鹿らしくなって、口に含んで噛み砕いた。

口の中に甘酸っぱい欠片がなくなる頃に、遠くからエンジン音が聞こえて、そっと斜め下に目をやると、少年はいなくなっていた。

 

 

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「曹達/夕方/みくじ」への3件のフィードバック

  1. 文章の流暢さの如く、展開も在り来たりなものになってしまいました。「バスが道を逸らした」という文章だけで心霊モノであることが分かってしまい、その上で子供、これもまた典型的な表象ですね。もう少しサプライズが欲しかったですね。

    異空間という曖昧な雰囲気を作って夕方感を出したいのか分からないが、それならバス旅の番組のように景色などを盛大的に描写して、その後いきなり心霊的展開!的な流れの方が面白いと思いました。

  2. 怖さを目指したのか情緒的な文章を目指したのかはわからないが、なんでもないが主題だったとしてもなんでもなさすぎる。もっと情景病をするとか突飛なところに視点を持っていかないと引っかかるところがない

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