Knockin’ On Heaven’s Door/食べたい/jboy

異変が始まったのは、827日のことでした。

いつもは絶対に残さないご飯を残してしまいました。大好きなキャベツも食べません。おしっこも漏らしてしまいました。

元々心臓が弱くて、お医者さんには覚悟しておくようにと言われていましたが、昨日まで元気にしていたので突然の出来事でした。

 

 翌日病院に連れていき筋肉注射と薬を出してもらって、症状は驚くほどよくなりました。

その日のうちにまたキャベツをねだり、人が飯を食っている横でキラキラした表情でこちらを見つめてきます。この様子を見て、家族は一安心しました。いつものように、僕は一緒になって大の字になって寝転がって遊んでいました。 

 元気になったのも束の間でした。最初の異変があった日から、約2週間たった911日のことです。またご飯が食べられなくなり、今度は立ち上がるのも辛そうでした。

この時はまだ心配でしたが、また2週間前のようにすぐに良くなると思っていましたので、今日は様子を見てまた明日病院に連れていこうということになりました。

 

 その瞬間は突然にやってきました。

 

その日は母と僕が看病していました。僕は先に横になり、その後は母が夜通し看病をしていました。

夜も更け、日付も変わった午前2時半ごろ。突然すくっと立ち上がり、廊下の方に向かったかと思うと、真っ暗な誰もいない窓へ向かって大きく一吠えしました。

その後昂奮も収まらず、動悸も激しくなりましたが、少ししたら落ち着いてきました。

母も疲れていたため、うとうとしながらそばで見守っていました。そしてふっと15分くらい気が抜けてしまいました。気が付くと、母の腕の中で安らかに息を引き取っていました。

 

912日の午前3時過ぎのことでした。僕は、世界で最も愛する存在を失いました。

悲しかったですが、この時はまだ実感がありませんでした。今にもむくっと起き上がり、いつものように僕の顔をぺろぺろとしてくれそうな様子でした。

 

 その後は、淡々と火葬の準備や手続きをしましたが、この時私と母は、居合わせた叔母から激しく叱責されました。

「どうしてそんな冷静にいられるの? あなたたちには愛情が分からないんだ。」

そう言われましたが、僕にはさっぱり理解ができませんでした。ですが、この時ため込んでいた感情が爆発しました。もうどんな言葉を発していたかなんて覚えていませんが、とにかく泣きながら必死で声を荒げ、叔母に抵抗しました。母は横でただ泣いていました。

 

 僕は愛する者の死を受け入れることができませんでした。家中に響く足音も、においも、今では思い出となってしまいました。死を受け入れないことによって、自己防衛をしているだけでした。

今にして思えば、無駄には吠えたことのなかった君が、最後の最後に吠えたのは、天国から来たお迎えを追い返そうとしたのではないか、「僕はまだ死にたくない。」そう主張していたのではないか、と思うと今の自分が情けなくていたたまれなくなります。

 

 格好悪い姿は君には見せられません。不器用なりに、君のいない世界を生きていきたいと思います。天国からきっと見守ってくれているはずだから……。

2016/10/25

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「Knockin’ On Heaven’s Door/食べたい/jboy」への3件のフィードバック

  1. ペットの話、なのかな。テーマとの関連は分からなかったけど、文章として綺麗。ケータイ小説を読んでるような感じ。ペット目線と僕目線が交錯しててどう捉えようか悩んだ。

  2. 一気に読めました。語り手の言葉遣いが統一されていて読みやすいです。ただ、語尾が〜しました。と一貫していたので、変化を加えるとまた違う味わいが出てくるのかなとおもいます。

  3. 先ほどのコメントに加えて。
    同じ者です。
    主語の存在を隠すことで、逆に文章が捉えづらくなっているところはもったいないと思いました。

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