あんぱん/食べたい/きりん

「あんぱんまん食べたい!」
そんなことを長女・4歳が言い出したのは土曜の午後2時。おとなしく録画したテレビを見ているかと思ったら、こちらがいつものように朝食・おやつ用のパンをつくろうと粉やらヘラやらを取り出す音をききつけたらしい。長女の横で寝そべっていた長男・6歳も急に起きだし「お腹すいた~」などと言いだす。画面には顔がアンパンの彼が勇ましく飛んでいく姿。見てすぐにいただくのはなんだか悪い気もするけれど、しかたない。
「じゃあ、今日はあんぱんまんつくろうか」
「うん!」
幸いにして、こないだ買ったあんこが冷凍にあるし、生地は朝つくった分が寝かせおわっているから、あとは包んで焼くだけ。今日は汎用の生地にしておいてよかった。食パンの生地ではさすがに難しいだろうから。ごまは、子どもたちには必要ないか。

あんこを解凍し、少しだけお湯を加えて練る。そのまま食卓へ持っていき、新聞紙を広げて上に置く。
「ほら、じゃあおやつ食べたいひとはお手伝いしてちょうだい?」
「やる~!」
「え~」
「お兄ちゃんも!あんこ丸めて、ほら、これぐらいに」
不満げでもまだかろうじて素直な上の子をお手本に仕立て、こども二人にあんこはおまかせ。そのあいだに私はパン生地のほうを成形する。
「ママ、おわった~」
台所に顔を出した二人はまる外科医のようなポーズ。ああ、時々ゆびについたあんこを舐めていたのは見逃してあげよう。
「そしたらあんこはそこに置いといて。手、あらってきな。」
ふっくらと、空気をすいこんでおふとんのようになった生地をつぶさないよう、手早く餡を包んでいく。あんこ団子の大きさがまちまちだから、自然と個性あふれる仕上がりだ。手洗いから戻ってきた長女も目をらんらんとさせて覗き込んでくる。鉄板に並べ、うっすらと溶き卵を塗って加熱済みオーブンへ。一度には入りきらないので、まず第一弾。

パンの焼ける香ばしい香りに引き寄せられて、主人が書斎からさまよい出てきた。
「何焼いてんの?」
「あんぱん!はながね、あんぱんまんが食べたーい!って」
さきほどからオーブンの前をうろついて落ち着かない長男が駆け寄っていく。はな、長女にいたってはオーブンの前から動かない。
「あっ、ねえ、ちょっとスーパーまで行ってこない?2人連れて。チョコペンがあれば顔がつけられるから」
「はあ。まァいいけども」

「はい第一だーん!」
チョコペンをかまえて準備万端の2人の前にやきたてほかほかのあんぱんをおろす。こんがりと茶色で出来は上々。夫と長男からおー!という歓声がもれる。が、長女の反応が芳しくなかった。
「あんぱんまん、頭まるくない……」
どうやら後頭部が真っ平らなあんぱんまんがお気に召さなかったようす。彼女の理想はまん丸だったらしい。ややぐずりモードにはいる。たしかにアニメの頭部は完全な球体っぽいしなぁ。現実では重力とか熱のつごうで平らになってしまうんだけど、どうしようか。
「わかった!まん丸なあんぱんまん作ってあげるから、ちょっと待ってて」

結局私は第二弾のあんぱんをそのまま揚げて、あんどーなつにした。一応これで球体にはなったので、長女も満足したらしい。
以来、我が家での“あんぱん”は実はあんどーなつだったりする。

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「あんぱん/食べたい/きりん」への4件のフィードバック

  1. 親子のお料理はとても微笑ましいですよね。
    子どもの「こうじゃなきゃやだ!」という気持ちには、「やれやれ」と思いながらも親だと応えざるを得なくなるのも、うちの親を見ているとうんうんと頷けます。
    揚げたあんどーなつが登場してからの最後のまとめ方が少し雑かな、という気がしました。

  2. 文章のどこを見ても食べ物の単語が混ぜ込まれていて、自然とても美味しそうに見えて、それも家庭的手造りパンの匂いが食欲をそそります。
    キャラクターの立っている状態で読んでみたいです。素直だけどお姉さん気質の長女と、ワガママ盛りの長男と、二人の世話をしつつ趣味も兼ねてパンを焼くお母さん、とか。
    ので、これが事実とかこだわりならすみませんなんですけど、お父さんは別に出てこなくても良かったのではないかと思えてしまいます。印象薄くて記憶に残らないといいますか。三人で家庭が完成されていたので、お父さんが居なくても違和感は感じないと思います。

  3. すごく微笑ましい感じと、子供だからあんぱん自体をアンパンマンと呼んでるあたりとかすごく情景が思い浮かびます。揚げちゃうと表面ガサガサなアンパンマンが出来上がると思うのですが、大丈夫なんでしょうか…?
    せっかく子供のセリフ描写とか上手いので、まんまるあんどーなつが完成した後の反応とか掘り下げてほしかったです。

  4. アンパンマンによって子供たちが自分の意思でおやつをねだり、お手伝いをして、達成感を得る感じが好きです。
    かわいい描写ですが、パンを焼いたりあんドーナツを作ったりしたら時間がかかりそうですね。

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