続・深夜冷蔵庫/食べたい/仄塵

9時以降の食事は「罪」となる。生命の危機までは行かないが、健康的でいるために、体重制限のためにそうしなければならないのである。容姿の問題で心の不穏やメンタルヘルスの異常を引き起こし、そのダメージは脂肪とともに体に還元するだけだから、ダイエットも食事制限も誰かに強いられたことではなく、自分が好んでやっているのだ。

ひとみはベッドの上で携帯を弄りながら、空腹と苦闘している。これから来る肌見せシーズンに向け、ダイエットをするのは例年行事。いっそうMarchじゃなくDietと呼んでもいいじゃない、私の3月。と彼女が思う。昼は午後の仕事のために普段通り食べたけど、夜は心を鬼にしてトマト一個しか食べてない、198円。

案の定9時半を回ったところで消化するものもないのに動かせている腸が抗議し始めた。何かを食べたいな、しかし今食べってしまったら明日の朝は絶対体重計に乗れないし、18時に晩御飯を食べる方がまだマシだ。負け犬、自分は負け犬になる。

しかし誘惑は大きい。なぜならひとみが住んでいる1Kのマンションのキッチンは狭く、仕方なく冷蔵庫を部屋に置いている。ベッドからの直線距離は4.5メートル。非常に視線に入りやすいのだ。

一枚の食パンを食べてもいいかしら。考えるだけならカロリーは加算されないだろう。トースターで焼いて、外カリ中ふわ。朝残ったハムも乗せて、カロリーオフのマヨネーズを三往復絞る。今スライスチーズが切れているのが悔しい。

しかし正直なところ食パンだけじゃ物足りなく感じる。自分が貪欲な女だからじゃなくて、パンを一枚食べて食欲を刺激してしまったら、アイツと満たされてない胃袋の組み合わせは恐怖なのだ。そこそこ満足感と満腹感を得られるものじゃないと。

やはり簡単に作れる焼きそばは夜食にぴったりだよね。キャベツまだ残っているし、肉はウィンナー入れても美味しい。安売りで大量買った玉ねぎを入れたら野菜もたっぷりで意識高め。普段なら自分でソースや調味料を足したりするが、付いている粉末ソースを忠実に入れるのも悪くない。フライパンを洗うの面倒くさいから、目玉焼きはなしにしようか。

そういえば大好きなマック最近食べてないな。前の食品安全問題は全く気にしないしそこを含めてのジャンクフードだと思っている。店内は暇つぶしの高校生と可哀想なサラリーマンが多いが、私は毎回味を楽しむために行っているのよ。

しかし経営難で店舗が減っているのは困った。家に一番近い店は徒歩20分になる。デリバリーをやっているが定価が店頭より高い上に、1500円以上注文でさらにデリバリー料300円も加算される。1800円なんてデザート付きのおしゃれランチが食べられる値段よ。ちなみに、マックを食べてもカロリーオーバーにならないポイントは、ポテトを半分食べ、ドリンクをアイスティーにすること。

 

結果、今晩ひとみが食べたのは、歌舞伎揚げ、バニラヨーグルトとブラックチョコ。遠くの男より自分の胃袋、と開き直った。

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「続・深夜冷蔵庫/食べたい/仄塵」への4件のフィードバック

  1. 遠くの男より自分の胃袋。格言ですね。
    ついったーのにわか知識なのですが、漫画の背景って別に読んでる時に注目しないのになんで練習しなければいけないの? という質問のアンサーとして、違和感を感じないのはその背景が洗練されておりパースが狂うなどしていないから、というものがありました。
    つまり、この文章はすっと意味が頭にちゃんと入ってくるしすらすら読める、でもそれは確かな文章力に支えられているからだと敬意を表さずにはいられないなと感じた次第です。
    ただ、欲を言えばもっと食べものを作る部分の描写に抑揚があったらなーと思いました! キラキラの、目の前に浮かぶような、匂いを感じられるような!

  2. 9時以降の食事は「罪」という風にわざわざ強調したのにあまり罪っぽく書かれていないというか結局好んでやっているだけという理由になってしまっていたのが多少違和感を感じた。だけどテンポは凄くいいし読みやすい、とくにトマト〜198円。のテンポはよき。

  3. 空腹時に食べ物のことを考えたら止まらなくなるのも食べてはいけない葛藤もとても良く分かります…遠くの男より自分の胃袋。
    文中の様子が頭に浮かびながら読めて楽しかったです

  4. 自分との戦いを繰り広げて、結局誘惑に負けてしまう、という流れはとても共感できました。読んでいるうちにだんだん食欲が湧いて来ました。

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