すなっくYDK/気になるあの子/JBoy

桜木町駅を降りてすぐ、花の金曜日になるとスーツに身を包んだサラリーマンたちが、足並みそろえて向かうは野毛の繁華街。きらびやかな中心地からは少し離れ、うすら寂れた川沿いにうっすらと光る紫色のネオンが、哀愁を漂わせている。
ここは知る人ぞ知る、その名も「すなっくYDK」。
店内は5~6人が、なんとか座れるくらいのカウンター席しかないが、いつも常連客で賑わっている。店先の場末感とは対照的だ。

名物は何といっても、「野毛の母」の異名を持つこの店のママだ。聖徳太子のように、常連客一人ひとりの話を聞き、舌が3枚くらいついてるんじゃないかと思うくらいしゃべり倒す。常連客は、時には軽い冗談で馬鹿笑いしたり、時には重苦しい人生相談をしたりもする。ママの前では、みな素の自分をさらけ出すことができるのだ。

意外なことにママの素性は知られていない。地方出身で、18歳で上京してきた以外には、本名も知られていないし、これまでどのようにして生きてきたのかもわからないのだ。噂が噂を呼び、バツ2の子持ちだとか、実は裏で野毛を仕切っている元締めだとか、そんな話が絶えない。
でもみんなママの過去なんて気にしていないし、ママの人柄を慕って店にやってくることに変わりはない。どれだけどうしようもないやつの話でも、親身になって聞いてくれるし、厳しく𠮟ってくれることもある。優しさの中に厳しさを秘めたみんなの「母」なのだ。
ここは「すなっくYDK」。都会の生活に疲れた大人たちが行き着くオアシスである。

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「すなっくYDK/気になるあの子/JBoy」への4件のフィードバック

  1. スナックのママにしてしまうころが面白い上に読み手にも伝わりやすくなって、YDKさんがどんな人なのかつい想像してしまいました。今度是非お話ししてみたいですね。

  2. 書き方が楽しいです。変わった書き方をしているのに、主人公のヒトが鮮やかに描かれていてすごいと思いました。

  3. やられたな~と思う。逃げてないし面白いし、関係性がかいまみえる気がしてどきどきする。こっから深夜帯ヒューマンドラマが始まりそうで、夜更かしの元凶になりそうです。と妄想掻き立てられる設定描写だった。
    強いていうなら、ハードボイルド?な調子のわりには単語が幼く感じられてしまうところ…… ?文章だからそう見えるだけで、ほんと、渋い声でお茶の間に語らせたら深夜のアイスが捗りそうです。縦書きでもよいかも?

  4. スナックのママさんって1番母に近い存在だと思います。
    読んでいて心が安らぎました。

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