世渡り上手/気になるあの子/奴川

環境が変わればキャラも変わる。家庭、サークル、クラス……、みんな様々に顔を使い分けているのだ。そりゃあ分かる。でも、清田スタジオで自己紹介をする彼には「マジかよ」と思わざるを得なかった。だって。だってさあ、突然ドM発言するタイプだとは思ってもみなかったんだよ。

私はこのスタジオにほとんど知り合いがいない。そもそも大学に知り合いが少ないと言えばそれまでなのだけど。

でも彼のことは知っていた。フルネームと顔が一致する。これは、大学入学から半年経っても人文の人々の名前がほとんど分からない私にとってはかなり奇跡的なことである。なぜ顔を覚えられたかというと答えは単純で、基礎演習が一緒だったのだ。毎週の授業だけでなく、先生の企画で離島に旅行に行ったりした。そこまですれば流石に顔と名前が一致するようにもなる。大して喋っていたわけではないけど、これは単純に接触回数の問題だ。そういえばバーベキューには来てなかったなあ。突然のドタキャンに対して先生がちょっと寂しそうだったのが印象的だ。

少し話が逸れてしまった。とにかく、いわゆる素敵なリア充さんなんだなあと思っていたのだ。物腰は柔らかめ、そこまで饒舌なわけではないけれどよく笑っていて、友達に囲まれているイメージだった。いや実際彼女さんはいるしリア充なんだろうけど。バーベキューのドタキャンも、風のうわさでは友達と遊ぶためって聞いたし(本人には確認していない)。まだあれはゴールデンウィークくらいの頃だったから、上京?上横?してきて早々のその時期に遊ぶ友達がいるなんて流石だな、という感想を抱いたのを覚えている。

もう、ひたすらキラキラしている大学生というイメージだったのだ。私はそういう種類の人間は爽やか涼やかきらびやかな日々を送っていると思っているフシがあるから、彼もきっとそうなんだろうなと思っていた。だから自己紹介タイムでは、壇上に向かう彼を眺めながら、サークルの話をするんだろうか、というかなんでこのスタジオに来たんだろうか、などと考えていたのだ。そんな所での突然のドMカミングアウト。いやそんなキャラでしたっけ。騙された!と思った。いや、私がろくに会話もしないで一方的にキャラクターを想像していただけなんだけど、それにしたってすごいギャップだった。

環境が変わればキャラは変わる。しかし、同じ人間を別の環境から眺められて、キャラの違いを実感できる機会というのは案外少ないのではないだろうか。半年という短い期間で、見事なキャラの使い分けを観測できたのはちょっと面白かった。リア充、もしくはリア充に見える人ってつまるところ世渡り上手なわけで、世をうまく渡っていくには彼のようにキャラを使い分けていくしかないんだろうなあ。自己紹介でもめっちゃウケてたし、その場その場で受け入れられる自分を作るのが上手いんだろう。でも、それなら本当の彼を見ているのって誰なんだろう、と思わなくはない。ああ、そこで彼女か。

彼女なのかなあ。

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