好きなひとほど写真が少ない/気になるあの子/ノルニル

     数打ちゃ当たる、ということわざがある。
     サークルの仕事で、写真の整理をした。去年の夏にカメラを買ってから400日ほどになる。毎日欠かさず持ち歩いて、これまで撮りためた写真の数はぜんぶで2万枚弱。均すと一日あたり50枚、フィルムの時代では到底考えられない枚数だ。

     自分の写真をひとつひとつ確認するのは初めてだが、一人で出かけた先でたくさん撮っている割に、あんまり風景写真が上手くないということに気づいた。逆に人物のポートレートは上出来だ。それも作った写真ではなく、日常の一瞬を切り取ったようなオフショット。
     その時どんな状況だったか説明できるような、物語性のある写真が多くて、見返しているうちにクスッとなる。日を追うごとに上手く撮れているものが増えるので、撮影をこなし、構図を勉強するうちに少しずつ上達しているらしい。数打ちゃ当たる、たしかにその通りかも。
     とはいえ、腕が上がってもベストな表情を掴むのは難しい。目をつぶっていたり、顔が死んでいたり。いい写真を撮ろうとすると連写することになるので、必然的に枚数が増える、はずだったのだが。

 

     2万枚に目を通して気づいたのは、好きなひとほど写真の枚数が少ないということだった。好きなひと、というより「自分から見て距離の近い人」と言い換えてもいいかもしれない。
     フォルダを確認しても、ベストショットが2,3枚のうちに撮れている人は数人に偏っている。その他は20枚ほど撮ってようやくそれなりの写真が撮れる、というレベル。この傾向は男女問わず当てはまるので、たんに気恥ずかしいからとかじゃない。しかも、そういう写真はカメラに慣れてないうちからすでに上手いし。

     すこし理由を考えたが、自分が知っているからだと思った。その人がどんなときどんな表情の動きをするのか、どんな仕草をみせるのか。
     この人がこんな笑い方するときは喉元を覆ってるなとか、声に緊張が乗ってるから鼻に手を当ててるんじゃないかとか、そういうのがなんとなくわかる。耳で聞いて被写体を狙うこともあるから、写真には残らない音も重要な判断材料だ。
     とうぜん好きなひとほどよく観察するだろうから、笑った後に目を伏せて表情が曖昧になる、そのタイミングがわかる。ファインダーで一瞬を捉えてからシャッターを切るまで、場当たりでは心に垣根のようなものがあって、若干のタイムラグがある。知っていればそのチャンスを逃さずじわり感を切り取れる、すると渾身の写真があるならもういいやとなって枚数が減るという単純な仕組み、

 

     頭が痛い。こんな簡単なことに今ようやく気付いた。ちがう。ずっと前から知っていたのに見ないふりをしていた、たぶんこっちだ。
     ひとはきっと、思った以上に他人を見てる。他人も同じように、思った以上に自分を見てくれてる。人間味がないといわれるのが辛いと言いながら人を遠ざけてたのは自分自身で、こういう気づきすら人に伝える前に自分が救われたいから言葉にして、そうして人に伝えたはずのものが自分にかえってきて、それがようやく腑に落ちて染み渡ることで助けられてる。それでもきっと大丈夫だと教えてくれるのはいつもひとで、辛くて苦しくても、いつかはどうにかできると信じたい。

     ひとに大切なものをもらって、おかげで余裕ができた。周りにちゃんと目を向けたら、困っている人が大勢いた。でも本人が助けを求めないかぎり、自分から手を差し伸べることはできなくて、いま自分にできるのは話を聞いて、自分の言葉で語って、君のことを見てるよ、と全力でエールを送ることぐらい。もちろん、それでもうまくいかないときもある。
     でも、もしその人に勇気が出て、一歩でも踏み出すことができたら全力で支えたい、一緒に歩いてみたい。ひとからもらったやさしさをそのまま返すことはできないけど、それを誰かに受け渡していくことで自分も誰かのためになれたら。ずいぶん時間がかかったけど、そんな風に思えるようになった。

 

     だめだ。何度書き直しても小手先が使えないし、全然うまく書けない。つかそれ以前に話飛びすぎだし勝手に盛り上がって何言ってるんだこいつ、どう見てもやばいし普通じゃない。そもそも小学生のころ好いてくれた子を恥ずかしさのあまり泣かせて以来、女の子と友達以上に踏み込まなかったやつにこんな文章書かせる時点で無理がある。
     でも、どうやったってもう自分もひともちっとも嫌いになれなくて、だからなんとかなるって、いまはそう信じています。

 

     ええっと、本題に戻ると、ですね。ぶっちゃけフォルダ見られたら好きな子とか一発でバレます。なんかこれだけやけに上手くね?ってのがあるんで。そういうもんだと思います。読者のみんなもきっとそう。
     さあ、今日は楽しいパーティです。お話はこのぐらいにして、そろそろ目線をよろしくはいチーズ!カメラ向けたらどうか、笑ってくださいね。

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「好きなひとほど写真が少ない/気になるあの子/ノルニル」への2件のフィードバック

  1. 何か心に余裕が出てきた感じがわかりました。逆に自分自身の話を出すあたりまだこじらせてる感も見えます。そういうのを「克服した」と言えるのは、考え方が変わって切り替えられるようになった時なのか、あるいは全く考えなくなった時なのか。そもそも全く考えないようにはなれるのか。
    他人のコメ欄で勝手に迷子になって申し訳ありません。

  2. 仕事とか趣味とか、著者の経験を下地にした文章が好きだ。ディティールの細かさとそれに伴った心の機微がリアリティを生むのだろうか。いや、リアルなのだけど。言葉にすればカメラって奥が深いなというありふれたものになってしまうが、誠実に写真を撮るということに向き合ってきたからこそ書くことのできる文章だろう。

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