あの日のかえりみち/片付け/ネズミ

 

いつもの帰り道。変わらない景色。足取りは重い。今、自分の身に何が起ころうとかまいやしない。そんな気分だ。

今日は人生最悪の日だ。2年間付き合っていた彼女に突然別れを告げられた。今もまだ状況を整理できていない。予想外すぎることが起きて頭はパンク状態だ。ただこれだけは確実に言える。心は砕かれた。粉々に。

駅のホームに着くと、そこにはすでに電車が到着していた。発車のベルが鳴り出すが、走る気すら起きない。どうせあと7、8分後には次のが来んだろ。電車を目の前で逃し、ベンチに座った。

今日起きたことを冷静に振り返ってみる。もう彼女には会えない。この残酷すぎる事実が僕の体に重くのしかかってきた。うそだろ?もうあの笑顔を見られない?もうあの手を握れない?もうあの体を抱きしめられない?もうあいつに会えない?だんだん現実味を帯びてきて、涙が溢れ出しそうになる。頭をうなだれながら、あいつのことばかりを考えていたら、いつのまにか次の電車もすでに発車していた。もう7、8分待つしかない。

 

「まもなく〇〇行の電車がまいります」

重い腰をなんとか持ち上げて、電車に乗り込んだ。いつもと同じ景色が流れていく。ついこの間までは、デートの余韻に浸りながら、この景色を見ていた。いつもなら「今日は楽しかった!ありがとう!」なんていうLINEを送ろうとしている頃だろう。今日はただ一点を見つめることしかできない。もはや眼球を動かすことすら面倒だった。次から次へと表に出てこようとする悲しみを抑えることで精一杯だった。

好きだった。本当に好きだった。この気持ちがもう彼女に伝わることが決してないと思うと、胸が締め付けられるような思いになる。もうあいつの中にはおれがいない。おれがいることのできる場所がない。出会い、付き合ったという事実は今更、ひるがえすことなんてできない。忘れることなんてできない。というか、できるというのならとっくにやっている。この悲しみのうえで生きていく他ないのだ。この電車を降りたら、全てを受け止めて気持ちを切り替えよう。そう決めた。

砕けた心はまだひとかけらも片づけられてなんていない。

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「あの日のかえりみち/片付け/ネズミ」への2件のフィードバック

  1. 描写がリアルだと思いました。電車が7、8分後に来るということは、田舎ではないですね。

  2. 片付けられずに引きずる方で書いたんですね。このテーマだと、どちらかというとさっさと片付けて切り替えるパターンになるのかなと思ったので、少し意外でした。
    絶望感からのやけくそな感じの感情描写がうまいと思いました。

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