おかたづけ十色/片付け/三水

 「片付け」と聞くと、私はなんとも牧歌的な気分になる。片付け、というより、「おかたづけ」だ。なんなら音階を付けて「おっかた づけ~♪」でもいい。こいつを2セットで歌うと、自然と身体がはきはきと面倒事に動きだす気がする。

 お片付けは基本、なにか楽しいことの終わりである。遊び呆けた一日の最後の、ヘンに気分の高揚した、それでいて眠いような気持ちを抱えて行う一仕事である。
あそんだらかたづけましょう、かえるまでが遠足です…… 幼少期のこうした刷り込みは、実は結構、その人を表すんでないかと、私は思う。

・・・・・・

 大学入学を機に、自身が小4から通っていたお菓子教室でアシスタントととして働くことになった。要はアルバイトであり、雑用であり、一応先生みたようなこともやっている。

「せんせー これどこー?」
「せんせー なにすればいいのー?」
「せんせー タオルー」

 子ども向けのお菓子教室というのは意外にないもので、県内県外問わず遠くから車で通う子が結構いたりする。ちょこまかと動いては袖をひいてくる未来のパティシエちゃんたちは、元気いっぱいやる気いっぱい(とも限らないが)でなかなか楽しいのだが……ちょっと目まぐるしすぎる。
台風のようなレッスンが終われば、満を持しておかたづけである。当たり前のことながら、これまた嵐のような忙しさ。手足どころか、耳も口も三人前は欲しいところだ。
ひっきりなしに訪れるおちびさん達と食器類と大先生の言い付けをいなして言いくるめてちぎっては投げ投げては均し、何とかカタがつくとようやく、自身のお片付けが始まる。その日のことを振り返りながら。

 アルコールスプレー片手に、シンクを拭きあげる。
…… 今日のアキくんはお皿の場所は分からなかったけど、コップは覚えてて、たくさん抱えて持っていってくれたな。いっぺんにたくさん持つとあぶないよと言ったら、それから一つずつ両手で運んでは、また狭いキッチンを縫うように往復してたのはかわいかったな、とか。

 使いこんだ箒で掃き掃除をする。
…… 今日のミカちゃんは他の子より手が早かったから、待ち時間の洗い物がたくさんで、ちょっとイヤになってたな。洗い残しは『もう一回』だから、余計にかわいそうなことしたかな、とか。

 布巾を片端から回収して、洗濯機に入れる。
…… 今日は長めのレッスンだったからヨウくんはもう飽きちゃってて、気づいたらぺたんと床に座ってたのは驚いたな。片付けしよう?と声をかけたら、「ヨウくんもういいよ?」って宣ったのには思わず笑ってしまった、とか。

 干してあった道具だの型だのを棚にしまって、やっとこさエプロンを外す。
…… 最近反抗期のエイくんは、今日はお父さん付きだったから比較的大人しかったかな。何か運ぶごとに「はあ」とか「ふう」とかいうけど、他の子より重いものをわざと選んで持ってるの、皆知ってると思うよ、とか。

・・・・・・
 
 お片付けは決して楽しいことではない。むしろその終わりである。
そして終わりには、その人から浮かぶごくごくちっちゃな色が出る。

律儀なおかたづけ、
イヤイヤなおかたづけ、
放りだしちゃうおかたづけ、
照れかくしなおかたづけ。

洗いたてのまっさらなタオルを広げて、
次にこれを手に取り、角を揃えてたたむ人を思って、
なるたけ丁寧な気持ちで、一枚一枚干せる人になりたい…… とか、思っている。

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「おかたづけ十色/片付け/三水」への2件のフィードバック

  1. 一段落の長さは、文体にも合っている短さで、読みやすかったです。

    テーマの言葉から始める(「片付け」と聞くと~)のは、読むのに抵抗感を感じました。

  2. えーと、最初2段落の説明が中のワイワイきゃっきゃした素敵な文章と少し遠い感覚がしてしまいました。二段落目は最後の方に持ってきても良かったかな?
    俯瞰で見るといっしょうけんめいのおかたづけ、ってこれ程個性的で可愛いものなのだと驚きに満ちた内容で好きです。

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