ずっと数学や国際社会について勉強していたかった。/片付け/フチ子

すべてのものを引っ張り出して、床一面に並べて、部屋をぐっちゃぐちゃにした後に、一つづつ手で拾い上げてみた。

部屋中の、すべての引き出し、クローゼット、本棚、全部全部、開けて、引っ張り出す。適当に放り投げる。

あぁ、これは大事だ。今も使う。
これは、あのときの、たしか。いいか、もう。
この服は、あまり好きじゃなかったけどママに褒められて、よく、着てたっけ。
なに、この写真。こんなのまだあったんだ。
このネックレス、地味すぎてうれしくなかったな。
これは、ともだちと一緒に買ったやつか。本当はもっと花がついたやつが良かったけど、リボンの方に決まったんだっけな。
この本、大好きな人が勧めてくれたけど、最初の50ページくらいで本棚に隠した。

途端に嫌になる。ものたちをぶん投げて床に戻す。ぜんぶわたしから切り離されて、一掃されてしまえばいいのに。

ほんとうは、いま、なにもかもこわい。

いままで積み上げてきた、勤勉に着々と何かに向かって小さなことを毎日できる習慣が、3年間で崩れてしまった。感情のコントロールなんて得意な方で、強気で、人の気持ちを無視して自分の気持ちを優先してきたのに、今はできない。

いろんなしがらみが、この3年間で急激に襲ってきた。

経験値はたくさん溜まったはずだ。勉強だけコツコツとしてたころでは考えられないような、授業をサボってセックスに明け暮れたり、学食で涙ぐんだり、大学帰りに友達の家でスミノフを飲んだり。

ただ真面目であることが生きる指針で、ふざけた人を片目で見て馬鹿にし、蹴倒すことを考えてたあの頃とは違う。

たのしいのだ、こわいくらいに。やらなきゃいけないことを無視して、感情任せに人に甘えて、一喜一憂をくりかし、毎日がいろんな感情に支配されてる今が、たのしいのだ。

でも、そのぶん、ひとに興味が向いてしまって、自分の好きな、独立したモノがどんどんとなくなってしまった。わたしはこうだから大丈夫、これだけはなくならない、そういうものがない。

わたしの、ぐちゃぐちゃとした衝動が爆発したとき、全てがなくなってしまいそうな、危うさがつきまとう。その場しのぎで今だけの楽しさのように思えてしまう。

そんなものもとめてないから、今うちに、切り離してしまいたい。いやだ、いらない。いつか居なくなってしまうなら、いつかなくなって違う人のものになってしまうなら、そんなものはいらない。

いらないのに、なんでこんなにも魅力的なんだろう。

もう、逃げてたら人生がダメになる、また勤勉なわたしに戻らないと、だめになる。この、楽しいやら辛いやらに振り回される情けないわたしを片付けなければ。こんなものたちいらない。この楽しさを知れただけ、良かったじゃない、また元に戻るだけなのよ。

こんなんなら、知らなきゃ良かった。出会わなきゃ良かった。近づかなければ良かった。

しっかりしてくれ。
綺麗で整頓された部屋に、戻そう。

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「ずっと数学や国際社会について勉強していたかった。/片付け/フチ子」への3件のフィードバック

  1. 片付けしてて思う昔と今の変化とか、それに対しての葛藤とか恐怖とか諦めとかをちゃんと書いてるなぁと思いました。中高でできてたことなんか当然のようにできなくなっているので確かにすこしげんなりしますね。

  2. 自分の頭の中や堕落した生活を片付けたいという感情と、故意に散らかされた部屋がリンクしているところが凄いなぁと思いました。

  3. ほんとにいつ読んでも共感できないなー
    でもこういうのが多くの人の共感を産むってのも少し学んだ気がする。個人の感情をなるったけ投影できるのは素直に感嘆

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